名指揮者をデフォルメものまね その5

2009.07.31| 好田タクト

第5回 怪人「ゲルギエフ」

これからまねてみたい指揮者は誰かと聞かれたら、真っ先に挙げたいのが、バレリー・ゲルギエフですね。
彼は久しぶりに現れた、癖の強いカリスマ指揮者だと思います。
以前、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団と一緒に来日した際、
プロコフィエフの「交響曲第5番」の楽章間を、休みなしで一気に演奏した斬新な解釈には圧倒されました。

彼はジェームズ・レバイン同様、世界各地の指揮台にエネルギッシュに立ち続けています。
それに発言も面白いですね。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者サイモン・ラトルが「さわやかなエンターテイナー」なら、ゲルギエフはその対極にある「怪人のようなコメディアン」だと思います。
私の中では竹中直人さんのイメージに重なるんです。

ゲルギエフの演奏や映像はとにかく見ごたえがあって、私のライブラリーの中で最もCDやDVDが多い現役指揮者かもしれません。彼のまねをするとしたら、怪人のようにストイックな雰囲気の中で、時折のぞくユーモラスな表情に力点を置きたいところです。しかし、彼の本当に面白い部分は演奏解釈ですから、選曲も重要になってくると思います。

彼の指揮姿は打点が分かりにくいので、選曲するならオペラがいいかもしれませんね。
来日公演で話題になったプロコフィエフのオペラ「炎の天使」には興味があります。
あるいは、ストラビンスキーの「春の祭典」のように、前衛的で、派手で、神経質な作品が合うような気もします。

現代において、ゲルギエフのように個性的なカリスマ指揮者は本当に少なくなりました。
彼は今後世界のトップに君臨するかもしれない人ですから、私のレパートリーで中心に来る可能性があります。
その日に備えて、私もゲルギエフの物まね芸を磨きながら、彼の頭髪にふさわしい究極のカツラを見つけ出したいと思います。
好田タクト(パフォーマンス)

 

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