私が子育てをしていた頃、子どものためのコンサートなどは1つもなかったし、子どもをコンサートに連れて行ってはいけないとみんなが思っていた時代でした。子どもたちの名誉の為に弁解をしますが(というか私の為?かもしれません)、そんなに何十年も昔の話ではありません。それでも私は子どもを連れてコンサートやコンクールを聴きに行っていました。周りではきっとあきれたお母さんと思われていたでしょう。
長女はおしゃべりをしないように、コンサートの直前に大きなキャンディーをなめさせられ、本を与えられました。次女はコンサートに行く日は朝から外で遊び、お昼寝は抜き。コンサートが間もなく始まる時に必ず「ママ、もう寝てもいい?」というと同時に眠っていました。いまだにピアノの演奏を聴くと眠くなると言います。
でもこの娘たちは音楽家ではありませんが、音楽を聴くこと、楽器に触れることは間違いなく好きでいてくれていると信じています。
そして私自身は小さい頃、母から毎日たくさんの童謡を聴かせてもらいながら育ちました。レコードを擦り切れるまで聴きました。今でも歌詞までも覚えています。土曜日の夕飯の後は弟妹と歌い、ピアノを伴奏したりと、楽しい家族団らんの時間でした。
あの頃歌った童謡を子どもたちに歌い継ぎ、孫の代まで伝えたい。娘たちがコンサート会場で口をふさがれながら聴かされたクラシック音楽をもっと気楽に皆さんには聴いて頂きたい、というのがこのようなコンサートを考えたきっかけです。子どもたちに伝えていきたい童謡、子守唄、そして歌曲もオペラの曲も、たくさんたくさん聴いて欲しいのです。今は聴いているのかいないのかわからないと思っても、子どもたちの心の中に、耳の奥に残っていると思います。いつか大人になったとき、「ああ、いつかママとコンサートで聴いたよね、この曲!」と思い出してくださる日が来れば嬉しいです。未来のクラシック音楽の素晴らしいオーディエンスを育てるのは私たちの大切な役目と思っております。
今回の公演でご一緒する山中さんは2歳になる坊やのお母さま、草刈さんはお父さまになったばかりです。
私も新米おばあちゃん。初心者マークの私たちは、わが子たちが練習を足元で聴きながら楽しんでくれるのを最高のオーディエンスと思い、コンサートに向けて準備をしております。皆さまとどうぞ会場でご一緒できますことを今から楽しみにしております。
庄司美知子(山中&草刈&庄司)