簡単に分かるギターの歴史

2009.08.12| 福田進一

ギターの福田進一です。

せんくらファンの皆様の中には、クラシック音楽は聴いても、ギター音楽、ギターという楽器をよく知らない、馴染みがないという方もおられると思いますので、まずは自己紹介の前に楽器紹介をしておきましょう。

私が弾いているのはクラシック・ギターです。今日ではエレクトリック・ギターのように電気を使って大音量でロックやジャズを演奏する楽器と区別して、アコースティック・ギターと呼ばれることも多いのですが、その生音を中心としたギターのなかでも、最も昔から伝わっている源流の楽器です。

歴史的に見てどれほど古い楽器かと言えば、それはピアノやその前身のハープシコードなどの鍵盤楽器が生まれる遥か以前から存在していました。エジプトの壁画にも刻まれ、その頃からキタラと呼ばれていたという話もあります。
それほど古い楽器です。

1500年代初頭にはギターの原型となったビウェラという楽器の最初の教則本が出版されました。イギリスでは同族のリュートが流行し、ダウランドを代表する当時の作曲家によって伴奏歌曲やリコーダーとの二重奏曲、初期の対位法を用いた数々の作品が発表されました。
この頃が最初のギター黄金期で、その後バロック音楽の進化複雑化によってその地位は鍵盤楽器に奪われていきます。再び脚光を浴びたのは王族貴族文化が花開いた1800年代初頭。当時のパリやウィーンでのサロン音楽にとって、持ち運びの便利な簡単に伴奏出来るギターは簡単な室内楽の楽しみや貴婦人たちの習い事にピッタリの楽器でした。

ギターを含むフルートや弦楽器との室内楽の多くがこの時代に作曲されています。この時期が第2のギター黄金期と呼ばれています。しかし、所詮音量に乏しいギターは、ロマン派の巨大な音響への指向や肥大化した音楽表現の潮流には着いて行けず、再び衰退していきます。

そして19世紀末になってスペインの天才製作家アントニオ・デ・トーレスによって改良され小さな音の代わりに豊かな音色の表現力を獲得したギターは、ひとりの天才ギタリスト、フランシスコ・タレガの演奏によって再び注目を集めます。タレガは奏法を改良し、作曲だけでなくピアノやヴァイオリンの作品を編曲してギターにアカデミックな方向性を与えました。

さらに20世紀に入って、その影響を受けた巨匠アンドレス・セゴビアが世界中で名演を繰り広げたことによってギターは独奏楽器としての地位を固めました。

今では世界中にギター音楽の文化が芽生え、ルネッサンスから現代までの多くの作品が演奏され、絶えず新作が発表されています。ギターはあらゆるジャンルの音楽に使われるようになり、フラメンコ、ジャズ、フォーク、ロックと多様な形態に進化してきました。これが私たちの時代、第3のギター黄金期です。

と、本来は本一冊かかるところを猛スピードで楽器の紹介をしました。

本日はここまで。明日は私の自己紹介をしたいと思います。

(*季刊誌「ムラマツ」2009年春号より一部引用させて頂きました。)
福田進一(ギター)

 

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