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SENCLA BLOG

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長谷川陽子
2017.09.18

王道チェロ・ソナタ

そうそう、去年のblogでも書いた我が家の2匹のアイドル、きなことすばる。大きくなっています!!特にすばるは音楽が大好きで、まだ譜読み状態のへたっびな時は、全く無反応なのですが、曲が体に入ってきて仕上がりつつあると、練習室の扉の真ん前でじっと聴いていてくれています^^練習後にふわもこのきなことすばると一緒にリラックスする時間が、一番のお気に入りです。

 

さて、今日は2つ目の公演第12回仙台クラシックフェスティバル【67】長谷川陽子の王道チェロ・ソナタ!について。

 

今回は若き天才3人のチェロ・ソナタを組みました。シューベルト、メンデルスゾーン、そしてショパン。

 

シューベルトの「アルペジオーネ・ソナタ」。このアルペジオーネというのは、チェロとギターを掛け合わせたような楽器でした。何でも広い音域をもつギターとチェロの弓で弾く音量の魅力をかけあわせて作ったら最強の楽器になるだろう!と思って発明されたそうですが、二兎追う者はナントカ・・・そううまくはいかなかったようです。

 

シューベルトは本当にメロディが美しい。そして温かさの中にふとみせる諦念が、たまらなく魅力的です。どこまでも穏やかで優しい微笑なのですが、少しずつその笑顔のまま遠くに去っていく・・・なんて切ないのでしょう。

 

そして、メンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第二番。メンデルスゾーンという人は、本当に才能豊かで音楽のみならず、絵も文学も語学の才能もあり、その上お家は大のお金持ち。メンデルスゾーンの音楽はいつも上昇志向です。いつも上行形の音型でメロディが書かれています。そしてこの2番のチェロ・ソナタの1楽章にいたっては、第一主題も第2主題も長調で書かれているのです。(通常ソナタ形式の場合は、第一テーマが長調なら、第二テーマは短調というように書かれています。)

 

このように音楽からもわかるように、才能も人脈も家柄も全てに恵まれて幸せだったはずの彼ですが、ただ一つ、心の奥に一生変えることのできない深い闇を持っていました。ユダヤの血でありながら、敬虔なキリスト教徒であったのです。その苦悩はこのソナタの第3楽章に吐露されています。

 

今、一番弾いてみたいのがメンデルスゾーンのオクテット。いつかせんくらで実現出来たら・・・小さな夢です。

 

そして、メンデルスゾーンと同年に生まれたショパン。このソナタは、ショパンの晩年に書かれました。当時の彼は最愛の父を失い、約10年もの間パートナーだった運命の人ジョルジュ・サンドとの別離、そして持病の悪化・・・。ショパンには病気以外、何も残っていませんでした。そんな中でこのソナタは書かれました。第一主題は10代で旅立ってから二度と生きて帰ることが出来なかった、故郷ポーランドへの望郷を。第二テーマでは過ぎ去ったサンドとの美しい想い出が込められているのでしょうか。そしてクライマックスはまるで生きることへの情熱をかけた、心臓の鼓動のような慟哭。

 

大好きな曲ばかりなので思わず熱く語ってしまいました・・・。このコンサートのピアノを務めてくださるのは、私の高校時代の同級生でもあり、同志でもある青柳晋さん。青柳さんとは、この夏ショパンのチェロ・ソナタをレコーディングしました。このコンサートでは各ソナタの1楽章だけをお聞きいただきますが、もしお気に召しましたら、10月25日リリース予定の新譜【長谷川陽子tribute Chopin】、こちらではたっぷり演奏しています、よろしくお願いします!

 

長谷川陽子

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