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SENCLA BLOG

ブログ

渡辺玲子
2015.07.01

7月1日

ブログ担当第2日、ヴァイオリンの渡辺玲子です。

フェスティバルと言えば、プログラムの中心的存在となる室内楽曲。今日は、私が関わっている室内楽コンサートの一つをご紹介いたします。

10日ほど前に、サントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデン(CMG)の特別演奏会「車いす利用者のための室内楽演奏会」が今年も行われ、特別支援学校の中高校生と職員&付添いの方々などで120名ほど聴きにいらっしゃいました。このコンサートは、障害を抱える子供たちにも気兼ねなく生の音楽を楽しんでもらおうという目的で、サントリーホールで毎年6月に行われているCMGのコンサートの一つとして、2年前から始められたシリーズです。私は初回からプログラミングと演奏を任されました。3回目の今回はベートーベンやシューベルト、ブラームスなどの古典作品を中心としたプログラムを組み、ホール館長で初回から演奏してくださっているチェロの堤剛氏の他に、東京カルテットとして40年以上世界で活躍された池田菊衛氏(ヴァイオリン)磯村和英氏(ヴィオラ)、そしてピアノの若林顕氏に加わっていただきました。

演奏を始めるとすぐに、音楽に合わせて身体を動かしたり、大きく声を上げたりする子供たちがいます。これは音楽に積極的に反応しているからで、奏者も他の聴いている人たちも特に気にしません。それよりも音楽の曲調の変化に合わせて、静かになったり激しく拍子を打ち始めたりと、刻々と反応を変えていく様子に私は注意を払います。そのことによって、私たち演奏者と聴いている子供たちとのコミュニケーションが、音楽を介してしっかりと成立しているかどうかが分かるからです。

私が毎年秋に行っている国際教養大学の「音楽と演奏」の講義で、学生たちに習得してもらいたい目的として掲げるのは、音楽を受け身で聴くのではなく、能動的に聴く姿勢を学ぶこと。音楽が与えてくれる豊かな情感と音色の世界に分け入り、積極的に反応する感受性を育てることです。これは実はとても努力のいる難しいことなのですが、特別支援学校の生徒の皆さんはそういう感受性の基盤をしっかりとお持ちのように感じています。

左から渡辺玲子、若林顕、池田菊衛、磯村和英、堤剛(6月18日サントリー、ブルーローズ)

左から渡辺玲子、若林顕、池田菊衛、磯村和英、堤剛(6月18日サントリー、ブルーローズ)   (写真提供:サントリーホール)

 

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