せんくらブログ

本当にあった仙台の話

2016.06.10| 成田 達輝

仙台にやってきたのは、これで何度目になるのだろうか。2013年から仙台国際音楽コンクール、学校訪問演奏会、仙台フィルとの演奏会など、多くの出会いをいただいてきた私にとって、仙台は東北の故郷に近いくらいに、親近感を持って居る都市だ。

仙台・・・仙人の住む都・・・そういえば、コンクールで仙台に着いた時、ホテルのロビーで摩訶不思議な出会いをした。

 

「チェックインは15時からです。」

参ったな、パリからの飛行機で疲れて一休みしたいのに、これじゃ万事休すだな、と思っていた矢先、フロントの横にあるソファに腰掛けていた一人のおばさんが話しかけてきた。

「あなた、疲れてるみたいね。よい人知っているから、ちょっと待って。」

彼女はおもむろに携帯電話を取り出し、ある男性にかけた。これからすぐその男性が僕らを迎えにくるという。でも、不安な気がしなかった、なぜだろう。空気があたたかいのだ。

10分ほどすると、ロビーの下で、グレーの4人乗りの車が待っていた。男性は軽く会釈し、僕も頭を下げると、みんなで車に乗り込んだ。

移動中は特に何も話さず、しーんとしていた、しかし居心地がよい。

―連れ去られるのかな、拉致かな、危ないのかな― 全くそういう感じではない。

仙台市が見渡せるくらいの丘の上に着くと、そこは仏舎利といって、仏様が塔のような建物にいっぱいいた。僕は風が気持ちよいので、丘の端っこの、岩がせり出している斜面の手前にあぐらをかいて、深呼吸した。

30分ほどたった。自分がどこにいるのか、なぜいるのか、などはどうでもよいことだった、とても爽快な気分だった。

その後、車でおりていくときに男性が

「おなかがすいたでしょう、仙台で一番おいしいそばが食べられるところがあってね、寄って行こうか?」

と誘ってくれた。

「はい。」

と僕は答えていた。

 

そばが来ると、夢中で頬張った。なぜか涙が出てきた。その後、車でこう尋ねられた。

「そういえば 君の名前は?」

「成田達輝です。」

「なるほどね。」

 

・・・とても新鮮な感覚だった。名前なんて人同士を区別するためのもの、あって、ないようなものなのかもしれない。

そして、

「君のオーラの色は紫とオレンジだね。何か芸術関係でもやっているの?」

「はい、ヴァイオリンをやっていて、仙台国際音楽コンクールっていうのがあって、この後出場するんです。」

「ほう、じゃあ頑張ってね。そうだ、僕の名刺、これあげるよ。もう1枚しかないんだけど。」

その名刺は虹色の暖かい光に包まれていて、触ると熱かった。

「これを持っておけば、大丈夫。気を送ってあげるから。」

そう言って、ホテルのロビーで、何事もなかったのように、お別れをして、帰った。

 

夕食を食べた後、ドラッグストアに寄って、疲れが取れるからと思いバスソルトを買った。

そのラベンダーのバスソルトが、オレンジ色だったことは、もはや言うまでもないだろう。。。

 

写真1

 

成田達輝(ヴァイオリン)


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