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7月2日 | 渡辺玲子

2015.07.02

ヴァイオリンの渡辺玲子です。

私のブログ担当も最終日。

この機会に、東北と西洋音楽のつながりについて、少し調べてみました。

フランシスコ・ザビエルによって日本にキリスト教が伝えられたのが1549年、1582年には九州の大名たちが長崎の神学校で学んだ4名の少年を使節として、ローマ教皇のもとに派遣します。8年後に帰ってきた少年使節団は、豊臣秀吉の前で5種類の西洋の楽器(ハープシコード、クラヴィコード、ハープ、ヴァイオルとリュート)を用い、西洋音楽を演奏して見せたとされています。四重奏だったと記録されていますが、曲目などは不明。

1613年に伊達政宗は支倉常長を副使にして、180人程の一行を貿易交渉のためにスペインやローマやメキシコへ派遣します。船は石巻でつくられ出港、支倉もスペインで洗礼を受けますが、通商交渉は結局うまく行かず1620年に帰国。その時、ヨーロッパからどのような楽器を持ち帰り、演奏を行ったかはわかりません。ただ、そのころの東北には仙台と秋田に2つの教会があり、スペインとポルトガルの司祭たちによる布教が盛んでした。信者たちがミサでグレゴリア聖歌を歌っていたことは間違いないでしょう。

政府の方針が急転し、キリスト教禁止の時代になっていきます。東北でも弾圧が厳しくなり、秋田だけでも115名が処刑されました。しかし隠れキリシタンたちは「おらしょ」のうたを250年以上も歌い続けました。多分、音程やメロディーなどは少しずつ変化していったでしょう。しかし金や銀が世界の注目を浴びるようになると、東北の鉱山で働く外国人エンジニアや司祭たちによって、再び19世紀の西洋音楽が東北に広まっていきました。

東北には、西洋音楽に対する深いルーツがあるのですね。

10月のコンサートで皆様にお会いできることを楽しみにしています。

 

渡辺玲子

7月1日 | 渡辺玲子

2015.07.01

ブログ担当第2日、ヴァイオリンの渡辺玲子です。

フェスティバルと言えば、プログラムの中心的存在となる室内楽曲。今日は、私が関わっている室内楽コンサートの一つをご紹介いたします。

10日ほど前に、サントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデン(CMG)の特別演奏会「車いす利用者のための室内楽演奏会」が今年も行われ、特別支援学校の中高校生と職員&付添いの方々などで120名ほど聴きにいらっしゃいました。このコンサートは、障害を抱える子供たちにも気兼ねなく生の音楽を楽しんでもらおうという目的で、サントリーホールで毎年6月に行われているCMGのコンサートの一つとして、2年前から始められたシリーズです。私は初回からプログラミングと演奏を任されました。3回目の今回はベートーベンやシューベルト、ブラームスなどの古典作品を中心としたプログラムを組み、ホール館長で初回から演奏してくださっているチェロの堤剛氏の他に、東京カルテットとして40年以上世界で活躍された池田菊衛氏(ヴァイオリン)磯村和英氏(ヴィオラ)、そしてピアノの若林顕氏に加わっていただきました。

演奏を始めるとすぐに、音楽に合わせて身体を動かしたり、大きく声を上げたりする子供たちがいます。これは音楽に積極的に反応しているからで、奏者も他の聴いている人たちも特に気にしません。それよりも音楽の曲調の変化に合わせて、静かになったり激しく拍子を打ち始めたりと、刻々と反応を変えていく様子に私は注意を払います。そのことによって、私たち演奏者と聴いている子供たちとのコミュニケーションが、音楽を介してしっかりと成立しているかどうかが分かるからです。

私が毎年秋に行っている国際教養大学の「音楽と演奏」の講義で、学生たちに習得してもらいたい目的として掲げるのは、音楽を受け身で聴くのではなく、能動的に聴く姿勢を学ぶこと。音楽が与えてくれる豊かな情感と音色の世界に分け入り、積極的に反応する感受性を育てることです。これは実はとても努力のいる難しいことなのですが、特別支援学校の生徒の皆さんはそういう感受性の基盤をしっかりとお持ちのように感じています。

左から渡辺玲子、若林顕、池田菊衛、磯村和英、堤剛(6月18日サントリー、ブルーローズ)

左から渡辺玲子、若林顕、池田菊衛、磯村和英、堤剛(6月18日サントリー、ブルーローズ)   (写真提供:サントリーホール)

 

渡辺玲子

6月30日 | 渡辺玲子

2015.06.30

今日から7月2日までブログを担当するヴァイオリニストの渡辺玲子です。

せんくらには2回目の参加になりますが、数年前の無伴奏リサイタルのみでの出演に比べると、今回は協奏曲とリサイタルがあり、その分多くのアーティストの方とも交流する機会が増え、とても楽しみです。

ブログ第一日目の今日は、私の東北とのご縁のお話を少しいたします。2004年に秋田に開学した国際教養大学の特任として、毎年一学期間「音楽と演奏」というタイトルで一般の学生に音楽について英語での集中講義をすることになり、東北とのかかわりが深くなりました。秋田県内の名所は勿論のこと、青森や岩手、宮城、山形などの山や温泉なども、たくさん訪ねて回りました。栗駒山や松島、秋保温泉を訪れたこともあります。

実は、これを書いている今日(6月27日)も、東北の旅から帰ってきたところです。秋田の秘湯、夏瀬温泉で、ピアニストの坂野伊都子さんと一時間ほどのコンサートを行いました。オーナーの方とは国際教養大学を通して開学時以来お付き合いがあり、そのご縁で夏瀬温泉の10周年を記念した今回のコンサートとなったのですが、中庭の緑が窓を通して映えるモダンで落ち着いた色調のロビーで、50人程の方にサロン風のコンサートを楽しんでいただきました。

せんくらも、10周年。記念すべきこの年にまた参加できることを嬉しく、楽しみにしています。皆様もどうぞ、食と自然の魅力あふれる秋の東北で、音楽を気軽に楽しめる仙台クラシック・フィスティバルへいらして頂ければ嬉しく思います。

坂野伊都子さんと演奏後、夏瀬温泉のサロンで。

坂野伊都子さんと演奏後、夏瀬温泉のサロンで。

渡辺玲子