アンサンブル |
中川賢一
2015.09.18
私はクラシックのピアノのソロ、室内楽、現代音楽、ピアノのワークショップなどいろいろなジャンルで活動を行うことが出来て、本当に感謝しております。
ところで、アンサンブルを行う時に、どうして縦に音楽があっていくのか?ということを考えてみました。
曲の出だしはいつもある種の緊張感があります。
最初の音がいい音にならないと、そのあともがっかり・・・ということになりかねません。
アンサンブルの一番小さい形は二人なのだと思います。
二人というとたとえばヴァイオリンと二人で、ソプラノの方と二人で、ないしトランペットの方と二人で・・・などという風になるかと思います。
大抵ピアニストはヴァイオリニストなどのソリストの真後ろにいます。
そうすると表情も見えないような状態です。
ではどうやって最初の音をあわせるのか?
私の場合はまずは最初の音を出す前の「息」です。
どんなに小さな音でも、息をしているのがなんとなくわかる、これが長年演奏しているとどんな人と共演していても感じることができてきます。
それと関係したことなのですが、同時になんとなく演奏者の背中、特に肩甲骨のあたりを無意識のうちに見ています。
息をするとちょっと体が膨らむような感じがして、それが特に背中、肩甲骨あたりがちょっとだけ膨らむような気がします。
これは気のせいなのかもしれませんが、長年沢山の方と共演させていただいて得た知恵です。
「息をあわせる」とよく言いますが、まったくその通りで、この最初の息がうまく合わないとなかなかそのあともうまくいかないことがあります。
その息を合わせる感じも、背中を見る感じも、実は横を向いて共演者をみなくとも、入るタイミングがなぜかわかってくるようになります。
最後はもしかしたらお互い視覚を使わずに、なんとなく息というか、気のようなもので、アンサンブルできるようになるのが究極のアンサンブルなのかもしれませんね。
せんくらでは、チェリストの長谷川陽子さん、バンドネオンの三浦一馬さん、ヴァイオリンの神谷未穂さんと共演いたします。各々の方とのリサイタルになるので、3公演ですが、もしよろしければそんなところを気にして聴いていただいても面白いかもしれませんね!
では、みなさんブログをお読みいただきありがとうございました。是非公演でお待ちしております!
中川賢一
ツアーでの持ち物 |
中川賢一
2015.09.17
かなりの演奏家は移動、旅を避けて通ることができないと思います。
私も東京に住んではいますが、東京以外でのお仕事をいただくことも多く、かなりの時間が移動、旅になります。
人によって必要なものが違ってくると思いますがどうしても私の持ち物は多くかさばっております。
旅前に必ずチェックするものは
●スペアのめがね
●着替え
●ラップトップコンピューター(場合によっては二台)
●iPad
●iPodtouch
●手帳
●これから一か月くらいまでの演奏会の楽譜
●無線lanルーター
●演奏会衣装
となります。
まずは、めがねはすぐに替えがききません。いつどのような理由で壊れるかわからないのですが、これがないとまったく演奏できません。
着替えは理由はいらないと思います。
私は普通のソロの演奏だけではなく、様々なワークショップやアウトリーチを行っているので、ラップトップのコンピューターは、アウトリーチなどで何かグループで演奏するのに、突然編曲が必要になった時の為に、急遽の事態に備えていつも持っております。
このブログを書いているのも、とある音楽祭で10日間あるところに逗留していますが、そこでフルート、クラリネット、サクソフォン、ピアノという普通ありえない組み合わせのアウトリーチをすることになり、全員で演奏する曲がないので、電車の中で編曲作業をしておりました。
また、アンコールなど、突然以前演奏した楽譜が必要になるときもあり、それをコンピューターお中に入れていて、いざというときに取り出して演奏に間に合わせることも沢山あります。
特に現場に行っての作り物、例えばダンス、読み聞かせなどもともと沢山楽譜を持って行ってその場で決めるようなものは、楽譜を持参せずに、コンピューター一つで済むので助かります。
なぜ場合によってもう一台持っていくのかというと、音楽編集などする時のためで、音楽編集にはコンピュターのハードディスクににかなりの容量がなくてはならず、下手をすると固まってしまうので、別のラップトップを持っていくようにしております。ここに沢山の録音との共演のための資料が入っており、それをその場その場に合わせて取り出したりします。
iPadは、ここにやはり沢山の楽譜をため込んでおり、重い楽譜を沢山持ち歩くのではなくこれ一枚で済みます。また、楽譜を何らかの理由で紛失した時もこれですぐ確認できます。
iPodtouchは同じく新曲で楽譜だけではわからないものもその音源を聴くことでわかることが多いので、特に空き時間の多い旅の途中で勉強できるので、必須です。
手帳は毎日しっかり予定の確認をしてないとダブルブッキングの可能性もあり、常に確認できるように携帯しております。
そしてなんとも重いのが、これからある演奏会の楽譜なのですが、私はあらゆる方法で旅先で練習場を確保するように努力して、そこで毎日ちょっとずつ新しい曲を譜読みしております。この「毎日ちょっとずつ」がとても重要で、きちんと弾けていなくとも、なんとなく曲の全体位がわかるのが重要で、そうすると本番の日まではなぜか弾けている状態になり、体にストレスが来ません。
これが、時間があっても一日で新曲を何とかしなくてはならないとなるとすごいストレスになります。いま10日間逗留の音楽祭に参加中もせんくら4公演分の楽譜、ほかに指揮するスコアなど含めると、11月最初の週までで9つ分の公演の楽譜を持って歩いています。
滑稽かもしれませんが、突然時間があくとその時に練習したい気分の曲をさっと開くことができるので必要です。私は新曲を演奏することも多いので、なかなかそれはiPadに入れたりできないものがあったり、本番の大きさの楽譜で練習したいので、こればかりはその楽譜そのものを持っていきたいというものがあります。
これを支えてくれるのがリモワのスーツケース。
キャスターが本当になめらかで、平面であればどんなに重くとも、軽く押すとスーッと勝手に前に進んでくれるくらいです。これなしでは私の旅は成立しません!
さて、今日もチェックチェック・・・・
中川賢一
「オラ!」 |
中川賢一
2015.09.16
「オラ!」というのはスペインで「やあ!」「元気?」みたいな感じで挨拶の時に使う言葉です。
私がヨーロッパに留学していた時に、私の先生が指揮をしていたオーケストラのスペインのツアーがあって、バレンシアに行ったときです。
そこには何日間か滞在したので、コンサートをするホールにの地下に練習室があるので、毎日練習のために通っていました。
その部屋の鍵を借りるために、まずは守衛さんから鍵を受け取らなくてはならないのですが、受け取るときに、挨拶代りに「オラ!」と言っていました。
毎日同じ守衛さんなので、なんとなく仲良くなり、でも守衛さんは英語が話せないので、私たちはとりあえず毎日笑顔で「オラ!」と言っていました。
コンサート当日、ゲネプロでどんなピアノなのか?と思って大きなホールに入っていたら、カンカンと調律の音がするので、調律中の調律師に挨拶をしようと思ったら
「オラ!」
とあの守衛さんが調律していました・・・
確かにホールの調律は毎日必要で、狂ったり弦が切れたりしたら、すぐに直さなくてはならないので、調律師がいつもホールにいる練習室の鍵を渡す守衛さんを兼ねるというのも実際的ではありますね。
ヨーロッパでは色々なことが起こります。
楽しい思い出でした!
中川賢一