せんくらの楽しみ方

■ 原田哲男(チェロ)

(1)2006年08月06日

皆さんこんにちは チェロの原田哲男です。10月の【せんくら】ではオーケストラ、四重奏、合奏団、デュオと様々なジャンルで多くの公演に出演させていただくこととなり、大変光栄に思っております。

パンフレットには「仙台を拠点に活躍する九州男児」とあったので(有難うございます!)それだけで宣伝文句になるとは得してるなぁ、と我ながら思いました。ただ、鹿児島というと皆さん西郷さんをイメージするらしく・・「あまり似てないねー」と無茶な事をおっしゃる方もいます。自分では、太い眉毛は南九州ならではと思っているのですが。

仙台の街のオーケストラとはいえ、仙フィル楽団員の出身地は様々です。実際、団員77人のうち宮城県出身は9人という少なさ。それは、宮城の若者が(若者という言葉を使うとは・・・もうおじさんだ)音楽を学んでいないという事ではありません。オーケストラの場合、それぞれの楽器に専門的な技術を要します。そして一つのポジションが空くのは数年に一回。楽器によっては数十年に一回。
ですから、そこを狙って全国から人が集まるのは当のこととなります。

僕だけでなく、各地からの楽員は「まさか仙台に住む事になるとは・・」と思ったはず。 しかし、この街の住みやすさ、聴衆の温かさに支えられ、気持ちよく音楽に取り組める事に皆大変満足しているのです。オーケストラの音は、その土地の気候や言葉、県民性が大きく影響するものと思います。各地から集まった77名がこの土地に暮らし作り上げる、仙台ならではの音を【せんくら】やその他の機会に是非お楽しみ下さい。

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(2)2006年08月07日

秋のフェスティバルには県外からのお客さまも多いでしょう。仙台でお迎えする側の一人として、コンサートの合間に楽しんでいただきたいお勧めの店を、と考えてみたところ・・ 思い浮かんだのはうちの近所の普通のお店だけでした。

これぞ仙台!宮城!というお店は意外に知らないものだと思います。もちろん、牛タンはここがお気に入り(仙台人なら誰もが贔屓のお店をもっているかな?)というのはありますが、恐らくその店は普通にガイドにも載っているだろうし、わざわざブログでこっそり教えるものでもない。

自分はこの7年間何を食べていたのだろうか?

仙台に来る直前には「美味しい店を沢山探して、休日には山形のそば街道にも足を延ばそう」と夢を膨らませていたのが、実際にはそば街道どころか、行くのはほとんどが近所の店。 しかも毎回同じメニューというのが実状です。

あそこのラーメン屋は長男特製ラーメン、中華屋はニラレバ定食(普通はレバニラだと思うのだが、ここではニラレバなので注文の前に口の中で数回練習するというややこしい作業が必要)、あのお好み焼き屋はスペシャル1にホタテトッピング、うどん屋はきのこ汁うどん大盛。

どのお店にも他のメニューがたくさんあるのですが、店に入って型どおり品書きを眺めても・・結局いつもの・・となります。店員も「あ、やっぱりね」という顔。

考えてみるとこれは食に限らず、演奏でも「ここはこう弾くべき」と決め付けすぎてはいないか? こうも出来るしああも出来る、と弾く度ごとの違いを 楽しむ余裕や柔軟な感性が、毎回食べるメニューの少なさと同じように狭まってきているようで・・・

いや!男なら、これと決めたメニューを太く貫く生き方も捨てがたい。

いずれにしても、音となって表れる内容はその人間そのものだろうから、う〜ん 試しに一度次男ラーメンを食べてみようか。

遠くから【せんくら】に足を運んでくださる皆様、仙台には牛タンの他にも美味しいものが沢山あります(あるはず)。是非いろいろなものを召し上がって、音楽と共に仙台の滞在を満喫してください。

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(3)2006年08月08日

今日のブログは、セレーノ弦楽四重奏団(公演番号26,63)メンバー、仙台フィル首席ヴィオラ奏者の佐々木真史さんにお願いしました。彼とは歳も近く、入団したのも同じ1999年。 その人柄の良さに、これまで僕はどれだけ救われてきたことか・・・ 今回も「7回もブログ書けないから」と泣いて(?)お願いしてしまいました。

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こんにちは、仙台フィルの首席ヴィオラ奏者、佐々木真史です。チェロの原田哲男君より、セレーノ弦楽四重奏団についてのブログを書くようにいわれ、書いています。

西江辰郎君という、輝かしい才能が、仙台の街を離れ、早くも1年と半分が過ぎようとしています。彼が去ってからというもの、セレーノの活動もめっきり減りました。それもその筈、彼が仙台に居るときですら、4人のスケジュールを合わせるのは至難の業だったのですから。

それでも忙しいオケの合間をぬって、あちこちで演奏させて頂きました。仙台は勿論、東京、京都、長野、北海道...、演奏会だけでなく、セミナーに参加したり、東京で岡山潔先生のレッスンをうけたり。仙台フィルの客演指揮者としていらした、ギュンターピヒラー氏に、オケのリハーサルの後にレッスンして頂いたこともありました。とにかくアンサンブル漬けの毎日で、大変でしたが、充実していました。

そうそう西江君といえば、札幌でのセレーノの演奏会のすぐ後に金沢に移動して、プロコフィエフのコンチェルトを弾く!! なんて人間離れした偉業をやってのけ、つくづく凄い奴だなあと、感心させられました。

今回【せんくら】では、モーツァルトの「狩り」や「アンダンテ・カンタービレ」等、カルテットの定番の親しみやすい名曲を御用意しております。はじめてセレーノを聴いてくださる方にも、久々に聴いて頂く方にも、リラックスしてお楽しみ頂けると存じます。メンバー一同ステージで皆様にお会いできますのを楽しみにしております。

仙台フィルハーモニー管弦楽団首席ヴィオラ奏者・セレーノ弦楽四重奏団
佐々木真史(ささき・まさし)
仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(4)2006年08月09日

今日、泣いて(?)お願いしたのは、仙台フィルの定期公演などで、会場受付のお手伝いをしてくださっている、渡辺美幸さんです。コンサートは演奏者以外に沢山の方が関わって成り立つものですが、その中でも受付業務は、お客さまを笑顔で迎えつつ、時には苦情も受けなければならない。大変な仕事だと思います。

【せんくら】では市民ボランティアの方々が会場運営のサポートをして下さるそうですね。その方達の参加は、フェスティバルをより華やかに、活気に満ちたものにしてくれることでしょう。

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はじめ、この“せんくら”の企画を知った時。正直な感想を言ってしまえば「仙台でこの企画?え。ありえない!(かなり驚きの意味で)」でした。なぜ、「ありえない」なのか。それはこのラインナップ。豪華すぎません?パンフレットを手に入れた瞬間、この演奏会は絶対に行く!!とチェックしたのは、わたしだけじゃないはず。

クラシックという単語を聞くと、イメージ的に「硬い」とか「すました感じ」など、とっつき難い雰囲気がします。それでも今は、クラシック音楽マンガの大ヒットによって、だいぶ見方も違ってきているのでしょうけど。

けれどあえては聴かないよ、という方もまだまだ多いと思います。今でこそ大好きなクラシック音楽ですが、わたしも楽器を弾くようになり、オケに入ってからです。ちゃんと聴くようになったのは。ほんの小さなきっかけ。私の場合は自分が演奏する方にまわったことがそう。

クラシック音楽って、実は日常の至るところで溢れている。TVから流れてきたり、お店や歯科医院など、様々な場所で。意識的に聴いてなくても、毎日のように耳に入ってくる名曲たち。本当はとても生活に身近だったりして。
わざわざ聴きに行くのは抵抗が、という方々への、ちょっとした“きっかけ”。この“せんくら”って、きっとそう。

演奏時間も通常の演奏会の半分くらい。チケットだって、びっくりするくらい、安い。なんかそこら中でやってるし、ちょっと行ってみようかな・・と、気軽に行けてしまうと思うんです。

わたし、個人的に、ぜひ生でクラシックを聴いてもらいたいです。(特に、聴いたことがない、あんまり気乗りしないという方に!)CDでだって名演と言われるすごい演奏は聴けるけど、録音では味わえないものを、たっぷり感じ吸収することができるのではないかと。

例えば、その曲そのものの音楽的なものはもちろん、奏でる演奏者のひとつひとつの表情や、息づかい。その会場を包む空気。音楽って、“音楽”なだけじゃない。ひとつの物語。同じ曲でも演奏者によって全く違うし、聴く人の捉え方でもいくらでも変わってくる。そんな時間を演奏する側・聴く側で一緒になって味わうことができるのは、生で聴くことの醍醐味なんだと思います。

音楽は読んで字のごとく「音を楽しむ」もの。“せんくら”では、音だけではなく色々な「ちょっと特別な楽しい時」を過ごせるのではないかと、今から楽しみにしています。

渡辺美幸

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(5)2006年08月10日

そろそろ涙も枯れましたが、今日泣いて(?)お願いしたのは、仙台フィルに今年2月からヴァイオリン奏者として加わった、近田朋之さんです。

ブログ初日に「仙台フィルには全国各地からのメンバーが・・・」と書いたところ、「オーケストラのメンバー、一人一人の事を知る機会がないから残念」という声が聞こえた(天の声)ので、それでは、と、新入団員の近田さんに「自分の事を何か書いて」とお願いしました。

「音楽大学を出ていないとオーケストラには入れないの?」と聞かれる事がありますが、そんなことはありません。ちなみに彼は東京理科大学、埼玉県の出身だそうです。

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はじめまして、2006年2月入団、仙台フィルハーモニー管弦楽団ヴァイオリン奏者の近田朋之です。

僕の経歴はちょっと変わっているので、今日はそのことを大雑把ではありますが書きたいと思います。

僕がヴァイオリンを始めたのは3歳で、気がついたら父にやらされてました。休日は父のレッスンだったので、休日が嫌いでした。 その後ヴァイオリンは弾き続けていましたが、つぶしが利くとの理由で、普通高校に進みました。

高校の時あまり練習せず、ヴァイオリンで何が何でも食べていきたいとはあまり思わなかったので、普通大学に行こうと決心したのは高1の学生音楽コンクールが終わった時でした。一年浪人した後、東京理科大学基礎工学部に入学しました。ここの学部はちょっと変わっていて、1年の時は長万部キャンパスで寮生活なのですが、教室とは別にエソール会館という多目的施設があり、僕は、2年から学生オーケストラに入りコンマスをやりソロを弾くことを目標にして、エソール会館で毎晩ヴァイオリンをさらってました。

2年からは関東に帰ってきて、予定通り管弦楽団に入りました。自分は余裕でコンマスになれるだろうと思ってましたが、アンサンブルをしながら先輩に怒られたり、色々大変でした。しかし4年にもなる頃にはオーケストラがとても好きになり、また、ヴァイオリンが生涯自分になくてはならないものではないか、と感じるようになりました。

推薦で大学院に進んだ年の6月、もしも合格したら運命だというつもりでオーディションを受けました。 1次審査、とても緊張し絶対無理だと思ってたのに自分が残っているのが本当に信じられなかったです。

仙台フィルの方々には、このような僕を暖かく迎え入れていただき本当に感謝しています。仙台フィルの方々は、皆がより良い仕事ができるように、周りに対してとても思いやりがある方ばかりで、感謝していると同時に、頑張らなくてはいけないと思っています。

長々と失礼致しました。 このようなフェスティバルが開かれることをとても嬉しく思っています。これからも止まることなく精進しつつ頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

仙台フィルハーモニー管弦楽団ヴァイオリン奏者 近田朋之(ちかた・ともゆき)

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(6)2006年08月11日

すっかり他人に頼る事が定着してしまった僕のブログ、他の出演者は皆さんご自分で書かれているのに(伝田君以外)・・すみません。決して仙台フィルが他人任せの集団というわけではありませんので。

さて、今日は東北電力で広報、地域交流を担当されている松本真理さんにお願いしました。仙台フィルは年に数回、東北電力の主催コンサートとして、東北6県と新潟県の「名曲の夕べ」「親子コンサート」のシリーズに出演させて戴いております。それぞれのコンサートがその街の人たちにとって素敵な思い出となるよう、松本さん達スタッフが丁寧に準備をされていることは、コンサートの会場に着くと我々演奏者にもすぐにわかります。今回の【せんくら】を支える仙台市市民文化事業団にも同じ事が言えます。演奏以外の事を信頼できるスタッフに任せる事が出来る。とても有難いものです。

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はじめまして。松本真理と申します。よろしくお願いいたします。

仕事で、クラシックコンサート「名曲の夕べ」や、小中学校へ出向いて開催する「スクールコンサート」などを担当しており、仙台フィルさんとご一緒させていただいております。原田さんともそんなご縁で、今回のお話を頂きました。

音楽のお話、といっても小学校の時に吹奏楽団でパーカッションを,中・高でフルートを担当していたものの、クラシックに精通しているわけでもない私が、このブログを書かせていただくのは役者不足かも・・・と思ったのですが、素人目線でいくつかの極私的エピソードを紹介させていただこうと思います。

クラシックに関する最も古い記憶は、幼い頃の日曜日の朝です。寝坊している父と兄をよそに、母と私とで遅めの朝食を頂くことがありました。そんな時に決まって流れていたのがクラシックでした。かかっていたのはバッハやビバルディ、モーツァルトなどが多かったように思います。まだ少しひんやりとした朝の、トーストと紅茶とクラシック。私にとって幸せな記憶の一つです。

小学生の頃,学校に仙台フィル(その頃は宮城フィルだったかも・・・)の方が来て,演奏してくださったことがありました。今担当している「スクールコンサート」に良く似た文化行事です。吹奏楽っ子にとっては,プロの演奏は憧れそのもの。自分が奏でる音とは全く違う、深味があるのに雑味がない、丸く透き通った音色にすっかり魅了されてしまいました。コンサートが終わってからも,みんなで奏者の方の後にくっついていって大騒ぎ・・・。あの時の渡り廊下の様子と,はにかんだような奏者の方の笑顔をありありと思い出します。

確か中学生の頃でした。音楽室の壁にも肖像写真が飾られている高名なフルート奏者、オーレル・ニコレさんが県民会館でコンサートをされるということで、友人が誘ってくれました。憧れのソリストの演奏を生で聴ける喜び。習いたての英語で手紙を書き、日本的な花をと濃紫のアイリスの花を買って行ったのですが、当時から要領の悪い私は本人に渡せず・・・。お客さまがみんな帰った会場でうろうろしていたところ、舞台を片付けていた係員の方が事情を聞いてくださり、「本人に渡してあげる」と言って預かってくださいました。その後、しばらくして、英語で書かれた手紙が私の元に届きました。差出人は、なんとオーレル・ニコレさんご自身!本当にびっくりしました。今でもその嬉しさを思い出します。

感激した私はその後、本気でフルートの練習に打ち込み、仙台フィルのジュニアオーケストラのオーディションに挑みました。・・・ところがあっさり落選。自らの才能の無さと現実の厳しさを思い知らされたのでした。

そんな私が十数年たった今,仙台フィルさんとご一緒に、「スクールコンサート」や「名曲の夕べ」を開催しているのですから、不思議ですよね。

コンサート会場に行くと,「あの日の自分」がどこかにいるような,この中の一人がまた十数年後,この仕事をしているかもしれない・・・という不思議な感慨があります。コンサートが終わって、頬を上気させて帰ってゆく子どもたちを見送るたび、心の中で「この感動を心のどこかに刻んで欲しい」、と祈らずにはいられません。「せんくら」も、子どもたちの心に感動の明かりを灯す、そんな機会になればいいな、と思います。

最後に、八木重吉さんの詩「素朴な琴」をご紹介します。

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう

音楽は,目に見えないけれどいつも身の回りにあって,そして人のからだや楽器と、ある瞬間不意に共鳴し,「美しさに耐えかねて」溢れ出すものなのではないでしょうか。

今年の仙台の秋が「せんくら」を通じて、美しさ溢れる秋になりますように・・・。

東北電力㈱広報・地域交流部 松本真理

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(7)2006年08月12日

今年4月、仙台市中心部にある日本庭園の古い茶室でチェロを弾く機会がありました。

戸や障子をすべて開け放った和室から庭のお客さまへ向かってのコンサートは、外の空気に楽器がさらされる、救急車のバンダ付き(バンダとは、遠くから音が聞こえる効果をねらって舞台裏などで演奏する事です)等など、普段依頼されるコンサートの常識とはかけ離れたものでした。それでも、気持ちの良い春の風を感じながら音楽を聴くことに、お客さまは喜ばれていたように思います。

外で弾く事、PAを使う事は依頼を受けた時には正直不本意でしたが、庭に立つお客さま方の笑顔を見て、「こういった音楽の聴き方も、演奏者が思っている以上に求められているんだな」と感じました。

【せんくら】の会場は日本庭園ではないけれど・・ 2時間黙って難しい音楽を聴くだけがクラシックの決まりではないという事を、演奏者も聴衆も共に楽しめる3日間になると期待しています。

仙台フィルハーモニー管弦楽団 http://www.sendaiphil.jp/

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(C)仙台クラシックフェスティバル2006実行委員会