• 福田 進一
    FUKUDA Shin-ichi
    ギター
    プロフィール

    1955年大阪船場に生まれる。12才より故 斎藤達也(1942-2006)に師事。77年に渡仏し、アルベルト・ポンセ、オスカー・ギリアという両名教授に師事した後、1981年パリ国際ギターコンクールでグランプリ優勝、さらに内外で輝かしい賞歴を重ねた。以後30年、ソロ・リサイタル、主要オーケストラとの協演、E.フェルナンデスとのデュオをはじめとする超一流ソリストとの共演など、世界を舞台に意欲的な活動を続けている。キューバの巨匠レオ・ブローウェルから協奏曲「コンチェルト・ダ・レクイエム」を献呈され、2008年コブレンツ国際ギターフェスティバルにてライン州立響と世界初演、引き続き作曲家自身の指揮によりコルドバ管弦楽団(スペイン)と再演。2011年10月には、ブラジルのサンパウロで開催された第3回国際ブローウェル・フェスティバルでサンパウロ交響楽団と南米初演し大成功を収める。さらに同フェスティバル中には、E.フェルナンデスとの共演により、ブローウェルの新作、2つのギターのための「旅人たちのソナタ」世界初演し圧倒的成功を収めた。2012年5月には、20回を迎えたドイツ・コブレンツ国際ギターフェスティバルのメインゲストとして、バルエコ、ラッセル、ピエッリ、フィスクらと共に「現代のマエストロ」として招かれた。教育活動にも力を注ぎ、その門下から鈴木大介、村治佳織、大萩康司といったギター界の実力派スターたちを輩出。それに続く話題の名手たち、益田正洋や朴葵姫らにも強い影響を与えている。ディスコグラフィーはすでに70枚を超え、スペイン音楽第2集「セビリア風幻想曲」が、平成15年度第58 回文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞。代表作は「福田進一 アランフェス協奏曲」(共演:飯森範親指揮ヴュルテンベルグ・フィルハーモニー管弦楽団/日本コロムビア)、「オダリスクの踊り」、「エチュード・ブリランテ」等。2011年よりバッハ作品集のリリースを開始し、現在までに「シャコンヌ」、「主よ人の望みの喜びよ」、「G線上のアリア」(マイスターミュージック)をリリース。2014年にはナクソスレコードより「武満徹作品集」がワールドワイドでリリースされた。平成19年度、日本の優れた音楽文化を世界に紹介した功績により、外務大臣表彰を受賞。平成23年度 第62回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。上海音楽院、大阪音楽大学客員教授。東京国際及びアレッサンドリア国際ギターコンクール審査員。

    せんくら10周年へのメッセージ
    せんくら10周年、おめでとうございます!

    10年ひと昔と言いますが、本当にあっという間ですね。

    1つの街で3日間で100回近い演奏会が行われる、この世界でも稀に見るユニークな「仙台クラシック・フェスティバル」、まさにその第1回の朝1番の舞台という大役を務めさせて頂いた事、今でも忘れられない思い出になっています。これは何度も語り、書いたので、またかと思われるかも知れませんが、10周年のご挨拶ともなれば、書かざるをえません。

    私は2005年当時、中国の上海音楽院の客員教授を引き受けたばかりで、どうしても直前まで上海にいなければなりませんでした。帰国して成田から羽田に移動などで、乗り継ぎ良い時間のフライトがなかなか見つからないのです。航空会社に相談したら丁度都合の良いことに上海〜仙台便があると言うのです。私はせんくら前日のフライトを予約しました。

    しかし、折り悪くその日は大変な暴風となりました。飛行機の窓から仙台空港が見えているにもかかわらず着陸不可能。機体がぐるりと旋回したのを感じました。で、これはたぶん羽田に着陸するのだろうくらいに思っていました。ところがです!着いたところはなんと関西空港。もう夕方になろうとしていました。何とかして今日中に仙台に否、少なくとも東京には着かねばならない。東日本方面行のフライトは次々と欠航になっていきます。堪りかねた私は大阪駅に急ぎました。なんとしてもそこで最終の新幹線に乗らなければなりません。しかし、これもフラれてしまいました。残す手段はただ1つ、その当時はまだ運行していた夜行列車の『銀河』です。キャンセル待ちで最後の一席が手に入りました。翌朝の午前7時ごろに東京駅に着き、そこから新幹線で仙台に向かいました。この列車の中でも満席で立ったまま2時間仙台に向かったのを今でも覚えています。確か本番は10時過ぎ、駅からのタクシーの車内でタキシードに着替え、楽器のケースを開けて調弦をし、「オッと、蝶ネクタイを締め忘れてる!」などと大騒ぎしながら滑り込みセーフで最初の演奏会に辿り着いたのです。今年で演奏活動35年、もうすぐ還暦を迎えようとしている私ですが、これまでにこれほどスリリングな本番はありませんでした。そういう意味でも「せんくら」のスタートは実に印象に残るものだったのです。

    さて、この仙台クラシック・フェスティバルで最も素晴らしい事は毎年気の合った音楽仲間と再会できることです。それはまるで同窓会のような和気あいあいとした雰囲気で、今年は誰と仙台の美味しい海の幸を肴に酒を飲もうかなというのが楽しみの1つになっています。

    もう一つ忘れてはならないのは地元のクラシックファンのお客様達の素晴らしい、好奇心に満ちた情熱的な反応です。この10年の間にクラシック音楽への知識が深まり、ファンの皆さんがそれぞれ思い思いに好きな音楽を楽しんでくださっている姿。さらに、このフェスティバルで初めてオーケストラを聴き、音楽好きになった小学生が今、立派な青年や素敵なレディーになって目の前に現れる。その姿に接する事が、大きなエネルギーとなって我々音楽家に還元されている気がします。

    10年という1つの節目を迎え、今年はクラシック王道の名曲集で皆様のご期待に応えます。

    これからも仙台クラシックフェスティバルが、より充実した豊かな音楽提供の場であり続けることを心から祈っております。私は気力体力が続く限り、この愛すべき「せんくら」に参加し続けたいと思います。