仙台クラシックフェスティバル2008 トップ

出演者ブログ

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キュウ・ウォン・ハン

   

2008年06月22日

 

皆さまはじめまして!

韓国出身のバリトン歌手、キュウ・ウォン・ハンをご紹介します。
日本では年末の「サントリー一万人の第九」や、兵庫県立芸術文化センターのオペラ「蝶々夫人」でシャープレスとヤマドリの二役で一万六千人の聴衆を魅了した彼ですが、ヨーロッパやアメリカなど世界中のオペラハウスでその美声を響かせていると共に、母国の韓国では大河ドラマの主題歌に起用されるなど、多彩な活動で活躍中です。

せんくらに登場するのは今年が初めてですが、仙台の皆さまにお会いするのを心から楽しみにしています。

ではまた明日!

マネージャー
竹島愛弓

 

2008年06月23日

今日はキュウちゃん(我々は親しみをこめて彼をこう呼びます!)の、音楽との出合いについて聞いてみましょう。



Q. 音楽との初めての出合いは?

7歳のとき、母に連れられて初めてガラコンサートに行きました。

あの衝撃はいまだに忘れられません。私の場合、両親は音楽家ではありませんから、

音楽の道を選ぶのは容易ではありませんでした。

しかし今舞台で、何にも代えがたい喜びや幸福感を味わうとき、私が音楽を選んだのではなく、

私は「音楽に選ばれた者だ」と実感するのです。



幼少時代を韓国で過ごし、高校でアメリカに単身留学、ニューヨークで色々吸収したと言います。

今では世界各地を飛び回り、何ヶ国語も操る彼ですが、私生活では一児のパパ。

子煩悩な姿を見ると親の愛情は世界共通で代々受け継がれていくのだなあと感じます。

息子をガラコンサートに連れて行く日も近いのかもしれません。



マネージャー

竹島愛弓

 

2008年06月24日

<キュウちゃんとの出会い>

人の出会い、ご縁とは不思議なものだなぁとつくづく感じます。

私がキュウちゃんと一緒にお仕事をするようになったのはつい最近のことですが、一番最初の出会いは約10年前にさかのぼります。

その頃、私は学生としてサンフランシスコ近郊に住んでいたのですが、
毎週土曜日はサンフランシスコのオペラハウスにて、
usher(お席に誘導したり、プログラムを渡す方)のお仕事をボランティアでしていました。
(せんくらには沢山の素晴らしいusherの方達がいらっしゃいますね!)

ごほうびは何といっても世界一流のオペラを体験することでしたが、
白人の歌手の方が多い中、アジア系で主役(もしくはヒロインの相手)
を歌っている人がいるのを発見した時は、少し驚いたと共に、すごいなぁと思ったものでした。
"カルメン"、"ドン・ジョバンニ"、"トゥーランドット"など、いくつかの作品で"その彼"を見た記憶があります。

名前までは覚えておらず、プログラムに載っていた写真をうろ覚えしていたくらいでしたが、
それから10年が経ち、事務所でキュウちゃんに会い、色々とお話をしている内に、その時の"彼"がキュウちゃんだったことに気付きました。
何という偶然でしょう。

"あなたがサンフランシスコで歌っていた時、私は客席の階段に座って見ていましたよ!"と話すと、
"出会いは不思議だねぇ"と一緒に笑いました。

さて、今日はそのキュウちゃんより生の声をお届けします。
第一弾は"食べ物について"です。では下記どうぞ!

マネージャー
竹島愛弓

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Today I want to talk about food and singing.
Eating is very important for me.
Tasty and healthy food would give me happiness and energy to sing
better.
So I try to eat well before I sing.
There are some people who think or imagine that singers eat certain
food and avoid certain food, in order to maintain a healthy voice.
But I do not believe that there is such a thing like good food for a
voice and bad food for a voice.
As long as you are satisfied and happy, there is no problem with that
food.
But there are some food I try not to eat right before I sing.
I try not to eat dairy food because they can cause phlegm.
Except that everything is fine with me.
My favorite food? SUSHI with a big smile!!

今日は食べ物と歌について話したいと思います。
食べることは私にとってとても重要なことです。
美味しくてヘルシーな食べ物は幸せにしてくれるし、上手く歌うための
エネルギーを与えてくれます。ですので、歌う前は正しい食事を摂るよ
うにしています。
中には、歌手はある特定の食べ物しか食べず、健康的な声を保つために
特定の食べ物を避けるのではと思っている人がいます。
でも、私はある食べ物は声のために良く、ある食べ物は声のために良く
ない、というのは信じていません。
あなたが満足でハッピーなら、その食べ物に問題はありません。
でも歌う直前には食べないようにしているものがあります。
それは乳製品です。痰が出てしまう恐れがあるのです。
それ以外は全て大丈夫です!
僕の好きな食べ物は何かって? スシですよ(ビッグスマイル)!!

キュウ・ウォン・ハン

 

2008年06月25日

今日は キュウちゃんより、<ゴルフと音楽>についての彼の意見を聞いてみましょう。
音楽に対してもゴルフに対しても真摯な姿勢で取り組む姿が目に浮かびます・・・でもゴルフはなかなか思うようにはいかないようです。

マネージャー
竹島愛弓

********

I love to play golf very much. But that does not mean that I am a
good player.
Actually I really want to improve my game in a big scale.
Many say that there are similarities between golf and music. In both,
rhythm is extremely important. And you have to relax certain parts of
your body and you have to use right muscles in order to execute. So
some people think musicians should be good golfers because they have
a good sense of rhythm. I hope that is not so true with everybody, I
don’t want anybody to judge my musicianship by looking at how I
play golf. Because if they don’t know how I sing, they would
probably think that I am not a good musician. But there is a hope,
you can improve your musicianship by hard practice and you will get
better in the future. Playing golf is the same case I think.
Maybe that’s why I don’t give up playing.
Everytime I play, I hear it from my heart “it will be better
next time”.

ゴルフをするのが大好きです。
でもだからと言って名ゴルファーと言うわけではありません。
実のところは長期的に見てもっとうまくなりたいと思っています。
ゴルフと音楽にはいくつか共通点があると多くの人が思っています。
両方ともリズムがとても重要です。体のある部分はリラックスし、遂行するために正しい筋肉を使わないといけません。
ですので、音楽家はリズム感があるのできっとゴルフが上手いだろうと思う人がいるようです。
それは全ての人(音楽家)にとって真実であるとは思いたくありません・・・僕のゴルフのプレイぶりを見て、僕の音楽家としての楽才を判断してほしくはありません。
なぜなら、もし僕の歌を知らない人がそれを見たらきっと僕のことを良い音楽家とは思わないからです。
でも、希望はあります・・・厳しい練習で楽才は成長し、もっと良くなる可能性はあるのです。ゴルフをすることは同じようなことだと思います。
多分、だから僕はゴルフをすることをあきらめないのでしょう。
ゴルフをする度に、心の声が聞こえるのです・・・“次回はもっと良くなるさ”と。

 

2008年06月26日

今日はオペラで主役を歌っていた時に思わず起こってしまったある事件についてキュウちゃんに聞きました。舞台上では何が起こるかわかりません!

マネージャー
竹島愛弓
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
During the performance of an opera, you get to use all different kind of props depending on the situation.
Sometimes you have to act like you are eating or drinking.
Sometimes they put fake food but from time to time they put real food on the stage.
For wine, they usually put grape juice in a wine glass and it looks just like a glass of wine. Some singers just pretend and don't eat nor drink. Some singers really drink on the stage. Sometimes that is a good opportunity to quench your thirst between hard singing!
But anything can go wrong in a live performance.
In 1999, I was singing the title role of Don Giovanni in USA. There is a party scene close to the end of the show. There was a big table in front of me and there was a chicken and a glass of wine looking like juice. One girl was sitting on my lap and another girl was standing right next to me. I was singing very happy and macho like music.
And I drank a sip in between my lines.
Then the drink went down to my wind-pipe instead of my stomach. Then I started coughing. I could not sing and was missing my solo lines.
The girl sitting on my lap was whispering and laughing at the same time to my ear that "Are you o.k.?" And I was not able to sing for the next couple of measures.
Finally I became o.k. and finish the show without further problem. Since then I am very careful with any "PROP" on the stage!

オペラ公演の時は状況に応じて様々な小道具を使います。
時にはあたかも食べたり飲んだりしているように演じないといけません。
その場合ニセモノの食べ物を置くこともあれば、本当の食べ物が置いてあることもあります。
ワインに関しては、大抵の場合グレープジュースをワイングラスに入れると、本当のワインみたいに見えます。
歌手の中には全く食べたり飲んだりしない人もいますが、本当に飲食する歌手もいます。時には一生懸命歌っている途中にのどの渇きを癒す良い機会になったりもします!
生の舞台と言うのはどんなことが起こってもおかしくありません。
1999年、私はアメリカでドン・ジョバンニの主役を歌っていました。劇の最後の方にパーティのシーンがありました。私の前には大きなテーブルがあり、チキンと(ジュースが入っている)ワイングラスが置いてありました。一人の女の子は僕のひざの上に乗り、一人は僕のすぐ隣に立っていました。音楽がそうであるように僕はハッピーでマッチョな感じで歌っていました。
歌っている途中少しだけそのワイン(ジュース)を飲みました。
すると、それは胃の中ではなく気管支の方へ流れていったのです。咳が始まり、僕はソロを数行歌うことができませんでした。
ひざの上の女の子は笑いながら僕の耳にこう囁きました、“大丈夫?”
そこから数小節は歌うことができませんでしたが、やっと大丈夫になり、問題なく無事にショウを終えることができました。
それからと言うもの、僕は舞台上のどんな“小道具”に対してもとても慎重になっています!

 

2008年06月27日

今日はキュウちゃんの“悪夢”について聞いてみましょう。
舞台に立つ人で同じような夢を見る人は多いのではないでしょうか・・・?
想像するだけで冷や汗が出てきます!

マネージャー
竹島愛弓
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Goodnight sleep is very important for the singers.
Because if you don't have a good sleep, then you don't have a fresh voice.
But if you have a big pressure, sometimes it is very difficult to have a good sleep.
When you sing an opera, there is a long period of hard working. A big part of that hard working is memorizing the music. Even if you know that you know your music, there is doubt that you would forget something on the stage.
Whenever I have to sing an opera, I have a nightmare which is the same all the time. It occurs to me usually during the rehearsal period. Sometimes it happens to me during the performance period.

This is how it goes.

I am on the back stage, wearing costumes with make-up, waiting to go on the stage. The music is playing and the sage manager gives me the queue. I try to go on the stage, and suddenly I don't know the first phrase. I don't know the music and I don't know my lyrics. I try to find a music score and I can not find it. I am sweating and there is no time. I try to go on the stage without knowing the music.

Then I wake up and find myself very lucky that it is not a real performance.

Onetime, I was not so lucky enough to get up on time.
I went on the stage. The orchestra was playing and I tried to improvise over what I hear. But it was not working. Suddenly the maestro stops the orchestra. And he walks out. And the orchestra walks out. And the audience walks out. I was alone on the stage in an empty theater.

My worst stage experience, but luckily in my dream....

良い睡眠は歌手にとってとても大切です。
なぜなら、もし良い睡眠が取れないと良い声が出ないからです。
でも、プレッシャーを感じていると良く寝られない時があります。
オペラを歌う時は、長い期間一生懸命に取り組むのですが、その大きな部分は楽譜を覚えることです。もう覚えていると自分で分かっていても、舞台上で何かを忘れてしまう不安はどこかにあるのです。
私がオペラを歌うときは、いつも同じ夢を見ます。大抵この夢はリハーサル期間中に見るのですが、時には公演期間中に見ることもあります。

それはこういう風に始まります。

私は舞台裏にいて、衣装やメーキャップなど準備を整えて出番を待っています。音楽が鳴りステージマネージャーが僕にキューを出します。そしてステージに行こうとすると、突然最初のフレーズが思い出せないのです。音楽も分からないし歌詞も分からない。楽譜を探しても見つからない。汗は出るけど時間がない。そして音楽が分からないままステージに向かうのです。

その時僕は目覚め、これが本当の公演で起きなくて本当に良かったと思うのです。

しかし、以前残念ながら起きるのに間に合わなかったことがあります。
僕はステージに行きます。オーケストラは演奏していてそれに合わせるように何か即興で歌おうとするのですが、それはうまくいきませんでした。突然指揮者がオーケストラをストップし、彼は出ていきました。オーケストラも出て行きました。そして聴衆も去りました。僕は空っぽの劇場で一人ぼっちで舞台の上にいました。

最悪の舞台経験ですが、幸いなことにそれは夢の中でした・・・

 

2008年06月28日

今日はキュウちゃんより、声のタイプに関しての洞察を聞いてみました。
皆さんは声のタイプに対してどんなイメージをお持ちでしょうか?

マネージャー
竹島愛弓

2008. 06. 28.

It is very difficult to say which voice type is better than which voice type.
Some prefer tenors and some prefer baritones.
It is totally up to a personal taste. But I hope many of you who read this like baritones like me haha.
There are some people who think higher the voice the better. For instance they think a tenor is a better singer than a baritone. And if he or she is in a choir and asked to move to a lower part they think they are demoted.
To me it does not make any sense but it still happens a lot.
A friend of mine is a very well-established bass. He is about 50 years old and he is a professor of voice too.
One day, he went to a church and there was a guy who asked him,
"Hey professor Kim, how much do you have to study more to be a tenor?'

どの声のタイプがどれより良いと言うのは難しいことです。
テナーを好む人もいればバリトンを好む人もいます。
これは完全に個人的な好みの問題なのです。でもこのブログを読んで下さっている人の多くは私のような“バリトン”が好きだと願っています。笑
中には声が高ければ高いほど良いと思っている人がいます。例えば、テナーはバリトンよりもレベルが上の歌手だということです。そしてもしコーラスに入っていたとして、低い声のパートに移されたとしたら、自分は降格させられたと思うのです。
自分にとっては全く理解できませんが、でも良く起こることです。
私の友人に、地位の確立されたバスの歌手がいます。彼は50歳くらいで声楽科の教授でもあります。
ある日彼が教会に行くと、一人の男の子が彼に聞きました、
“ねぇキム教授、先生はあとどのくらい練習すればテナーになれるの?”と。