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出演者ブログ

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イリーナ・メジューエワ(ピアノ)

   

2008年09月14日

 

<楽譜を見て演奏するわけは?>

皆さんはじめまして!イリーナ・メジューエワのマネージャーのいたはしと申します。今日から1週間、イリーナさんを多面的にご紹介していきたいと思います!

イリーナさんはロシア出身のピアニスト。92年にロッテルダム(オランダ)で開催された第4回E.フリプセ国際コンクールでの優勝以来、各国で活躍。11年前からは日本を拠点に活動しています。だから日本語はぺらぺらで、そして日本人以上に大和撫子!!録音にも積極的で、これまでに25点以上のアルバムをリリースしています。皆さんもCD店などでイリーナさんのCDを見かけた方が多いかもしれません。

イリーナさんは、演奏の際に必ず楽譜を見るという徹底した演奏スタイルを貫いています。楽譜を見るようになったきっかけやポリシー、そのあたりのお話しを聞いてみましょう。

イ:以前は私も暗譜で弾いていたのですが、ここ10年くらい必ず楽譜を見て演奏するよう
にしています。ある日、練習の時に気づいたのですが、楽譜を譜面台に置いてあるのにページをめくっていない!自分の感情にまかせて弾いているだけで作曲家の指示に従っていないんですね。一番大切なもの(=楽譜)をいかに疎かに扱っているかということに気付いてショックを覚えました。自分が作曲家でない以上、作品は楽譜の中にしか存在しません。決して頭や心の中にあるのではないのです。以来、練習の時はもちろん、コンチェルトでもリサイタルでも必ず楽譜を見て弾くようにしています。尊敬するロシアの大ピアニスト、リヒテルも「なるべく若いうちから楽譜を見て弾いたほうがよい」と語っていました。私としては偉大な大先輩のアドバイスを大切にしたい気持ちが強いですね。もちろん、暗譜演奏を否定するつもりはありません。人それぞれのやり方があってよいはずだと思います。良い演奏をするという目的は同じなのですから。

仙台での演奏は11年ぶり、せんくらへの出演は初めてです。10/12は「ロシア・ピアノ小曲集」と題して、ラフマニノフ、スクリャービン、メトネルを、10/13にはムソルグスキーの「展覧会の絵」を演奏します。
イリーナさん、聴き所などを伺えますか?

イ:今回は私の故郷ロシアの音楽を演奏します。12日に取り上げる三人の作曲家は19世紀
末から20世紀前半にかけてロシアが生んだ最高のピアニスト=コンポーザー。ロシア・ピアニズムの歴史で欠かすことの出来ない存在です。それぞれがとても個性的で美しい作品を書いています。ロシア・ピアノ音楽のエッセンスを味わってもらえると嬉しいです。翌13日に演奏する「展覧会の絵」は、皆さんご存知の名曲ですね。ロシアでしか生まれ得ないような作曲家ムソルグスキーの天才が最高度に発揮された傑作です。カオス(混沌)と神秘のはざ間にある、荒削りでありながら無限の可能性を秘めた作品だと思います。皆さんに聴いていただけることを、楽しみにしています!

明日からは、イリーナさんのプライベートに迫ってみたいと思います。

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

 

2008年09月15日

 

<味噌汁マスター>

イリーナさんは小柄で色白、お会いすると非常に控えめで楚々としいています。しかし演奏を聴くと、予想外に骨太!特別な体力づくりや食生活をされているのでしょうか?

イ:体力づくりですか・・・特別なことは何もやっていないですね。ただ、歩くことが好きなので、しょっちゅう散歩をしています。4〜5キロ歩くのは苦になりません。時には10キロくらい離れた場所に行くのに歩くこともあります。散歩の途中で未知の風景やお店を発見するのを楽しんだりしています。

本番直前は何も口にされませんが、普段の食生活に何か秘密がありますか?

イ:ごく普通の食生活だと思います。毎日普通に料理していますし。家では大体和食を食べることが多いですね。ロシア料理は滅多に作りません。やはり風土・気候と食事は密接に関わっているのでしょうか、日本で暮らしているとロシア料理を食べたいと思うことが少ないのです。和食がいちばん自然で美味しく感じられます。お蕎麦、うどん、豆腐、味噌汁、うなぎ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、鍋料理など、大好きですよ。魚の刺身も最初は苦手でしたが、だんだん好きになりました。苦手なのは納豆ぐらい。
和食の素晴らしいところは、ヘルシーで美味しいのはもちろんですが、料理を盛りつける器に至るまで様々に楽しめる点にあると思います。色彩も豊かですし、陶器や漆器などの手触りも楽しめますよね。食事というごく日常的なものごとの中にも芸術的な要素が自然な形で入っているのは、日本ならではの素晴らしさだと思います。あと、日本は地方ごとに食事もさまざまで、それぞれに名物料理があるというのは面白いですね。仕事がら色んな地方に行きますが、その土地のいちばん美味しいものを味わうというのはとても楽しい体験です。

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和食がお好きとのイリーナさん、味噌汁作りが大得意と聞きました。そう言えば、先日仕事で喜多方へご一緒した時に、おいしいお味噌のお店をご存知で、しっかりお好みのお味噌をゲットしていました。仙台味噌も赤味噌でおいしいお味噌汁が作れそうですね。

明日はイリーナさんの趣味を聞いてみたいと思います。

マネージャー
いたはしみづき
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2008年09月16日

 

<和風が大好き!>

昨日からイリーナさんのプライベートな側面をご紹介しています。
今日は趣味について。

イ:趣味は何といっても歌舞伎鑑賞! 毎月のように観に行っています。東京以外の劇場にも行きますよ。これまでに南座(京都)、松竹座(大阪)、御園座(名古屋)、博多座(博多)などに遠征しました。金丸座(四国こんぴら歌舞伎)も2回行きました! 歌舞伎に限らず、能、狂言、文楽、落語など日本の古典芸能は大好きですね。もちろん元々お芝居が大好きということもあります。ロシア時代にもよく劇場に足を運んでいました。ロシアにも素晴らしい演劇の伝統があります。洋の東西を問わず、芝居は人生に欠かせない大切なものだと思います。

私は日本人ですが、歌舞伎はたった1度しか観たことがありません・・・。

イ:日本の伝統芸能の素晴らしい点は、年齢とともに芸に深みが出てくるところ。文楽の太夫さんがインタビューで「50代、60代なんて半人前。70代、80代になってからが勝負」と語っていたのがとても印象的です。舞踊にしても100歳くらいの名人が軽やかに踊っているのを映像で見たことがありますが、本当に驚きました。80歳を超えたバレリーナが現役なんていうのはまず考えられないことですから。

演奏旅行や準備、日々の研鑽で忙しい日々と思いますが、イリーナさんにとってリラックスできる時間はどんな時ですか?

イ:リラックスできる時間ですか・・・。手作業が好きなこともあって、和風の小物を作ることを趣味にしています。色や柄の組み合わせを考えるのも楽しいですね。これまでに財布やバッグ、人形など、色んな作品を作りました。手作業に集中していると、音楽のことをしばらく忘れています。
※【写真】は、イリーナさん作の和小物

それ以外に日本ならではの楽しみは?!

イ:温泉です! お湯にのんびりと浸かりながらリラックスして何も考えずにぼ〜っと過ごすのは至福のひとときです。風呂上りの美味しい食事とお酒ももちろん最高ですね。

私がお休みをいただく時に、お勧めの温泉を教えてくださったりもするイリーナさんです。

マネージャー
いたはしみづき
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2008年09月17日

 

<子供の頃のこと〜ロシア時代の思い出>

私もつい先日知ったのですが、イリーナさんは次女です。次女らしく(?)、実は意思がとても強くて、譲れない、強気な性格だとか!?

※【写真】イリーナさん3歳

イ:私の生まれた家庭は、両親、姉、祖父母と私の六人家族でした。父親はエンジニア、母親は幼稚園の音楽の先生でした。私が生まれたとき5歳年上の姉がピアノを始めたので、ちょうど生まれたときからピアノを聞きながら育ったということですね。とにかくピアノの音が大好きで、姉を羨ましく思い、自分もピアノを習いたいと願っていました。そして5歳になったときに私もピアノを習い始めたというわけです。

日本に長くいらっしゃるので、ロシアの話を聞くと逆に新鮮ささえ感じます!
実は気の強い性格と聞きましたが・・・。

イ:次女の性格なのでしょうか、私は思っていることを表に出すことはあまりないのですが、内面は頑固ですよ。自分で決めたことは絶対に最後までやり遂げたい、という気持ちが強いと思います。

ではピアノの練習などもしっかりするタイプだったのでしょうか?

イ:ピアノの練習はけっこう好きでしたね。最初、地元(ニジニー・ノヴゴロド)の音楽学校で勉強した後、15歳からモスクワのグネーシン特別音楽学校で学び、引き続きグネーシン音楽大学でウラジーミル・トロップ教授に師事しました。

子供の頃の忘れられないエピソードなどは?

イ:小学生の頃、毎月1回程度、土曜日の夜に家族の前でコンサートをやっていました。
テーマを決めて、例えばモーツァルトならモーツァルトについて、本などで色々調べるのです。その研究成果を発表しながら曲を演奏する、というものでした。雰囲気を出すために、電気を消して蝋燭に火を点したり・・・今考えると随分子供っぽいですけど。コンサートが終わったあと必ず食べていたチョコレートケーキの味は忘れられないですね。

ピアノ(とチョコレートケーキ!)以外にはどんなことに興味がありましたか?

イ:音楽と並行して社交ダンスも習っていました。踊るのが大好きで、色ん
なステップを覚えましたよ。今は踊る機会がないのがちょっと残念ですね。

モスクワでの学生時代には、こんなエピソードもあったそうです。
ドイツのミュンヘンで、ロシアの大ピアニスト、リヒテルがリサイタルを予定していましたが、彼がキャンセルしそうな可能性が発生!イリーナさんが急遽代役に呼ばれました。ミュンヘンへ入り、準備をしたのですが、結局リヒテル本人が出てきて弾いたそうです。リヒテルは今でもイリーナさんの尊敬する大先輩の一人です。

マネージャー
いたはしみづき
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2008年09月18日

 

<レコーディング@魚津>

※【写真】レコーディングの模様

実は一昨日から、イリーナさんはレコーディングのために富山県魚津市に行っていますので、今日はCDの話題を取り上げましょう。レコーディングはお好きだと伺いましたが・・・。

イ:レコーディングは楽しいですね。演奏会とはまったく異なる面白さがあります。コンサートでは聴衆との対話が重要ですが、レコーディングは自分自身との対話です。たいていの場合、お客さんのいないホールで録音しますが、ホールが普段と違う風に感じられるのが面白いですね。壁や客席がだんだん近づいてきて、自分がホールの一部になるような感じがします。

現在、イリーナさんはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲収録に取り組んでいます。そのプロジェクトについて尋ねてみました。

イ:ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音というのは多くのピアニストにとって大きな目標のひとつだと思います。たいへんな時間と労力を要するプロジェクトです。32の高い山々に登るような感じでしょうか。それぞれの山ごとに魅力があり、険しさも風景も異なりますが、ひとつひとつ登ることに大きな充実感があります。今ようやく17曲を録り終えたので、半分くらい登ったところでしょうか。全部登り終えた後、何年かしたらきっとまたチャレンジしたくなるだろうと思います。そんな魅力のある山々です。

イリーナさんはコンスタントに毎年2〜3点のCDをリリースしていて、どれをとっても音楽に対する真摯な取り組みを感じさせる名盤ばかりです。これからもベートーヴェンのソナタと並行して、イリーナさんにとって大切な作曲家、ショパンやシューマン、シューベルトなどの作品、故郷ロシアの作品も録音していく予定です。充実したコンセプトでCDリリースを続けていきますので、どうぞご注目ください!!

マネージャー
いたはしみづき
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2008年09月19日

 

<子供達にも大人気>

イリーナさんブログ1日目にも書いたとおり、イリーナさんは11年間日本を拠点に活動されていて、日本語が堪能。非常に美しい日本語を話します。そして、あまり知られていませんが、それを生かしてとても貴重な活動をしています。

それは、小学校学校訪問“イリーナ先生の特別授業”です。

※【写真】:学校訪問の様子

イリーナさんが小学校を訪れて、日本語で音楽の特別授業をします。これは子供達にも大人気!プロ・ピアニストの演奏を目の前で聴く貴重な機会であり、また分かり易い楽曲解説、作曲家のこと、楽器の仕組みや、イリーナさんの母国ロシアのことを話すなど、盛りだくさんの内容に子供達も飽きることなく、最後の質疑応答では、目を輝かせて積極的に質問を投げかけてくれます。

今日は、イリーナさんが子供達と接して思うことを聞きたいと思います。

イ:学校訪問は自分にとってとても大切な活動のひとつです。子供たちと接するのはとても面白いですね。まずなんと言ってもコンサート会場に比べると教室はとても柔らかい雰囲気を持っています。何ともいえない温かさがあります。子供たちは素直ですから、構えて音楽を聞くということをしないのですが、そのぶん実は怖い聴衆でもあります。演奏の良し悪しにダイレクトに反応します。演奏の出来が悪ければ、すぐにざわついたり隣の子供としゃべったり。それなりに集中して演奏すれば静かに聞いてくれます。自分にとって鏡のような存在です。

やはりビックリするような質問が飛び出したりするんですか?

イ:質問や感想もストレートで面白いですよ。『ピアノ上手だね』と感想を書かれることもあれば、『イリーナさんにとってピアノとは何ですか?』とか『(ドレミファソラシの中で)どの音が好きですか?』など、すぐに答えられないような質問を受けることもあります。とても新鮮な感覚に驚かされることが多いです。

子供達に何かメッセージがあれば、どうぞ。

イ: 現代の生活は電子音に囲まれてしまって、生音(なまおと)に接する機会が減っているのがとても残念です。生音のもつ美しさに気付いてもらいたい。音楽は想像力の広がるとても豊かな世界だということを伝えたいですね。そして音楽を好きになってもらえれば、それがいちばん嬉しいですね。あとは、音楽でも勉強でもスポーツでも、自分も頑張ろうという気持ちになってもらえるのも嬉しいことです。

マネージャー
いたはしみづき
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2008年09月20日

 

<皆さんへ、メッセージ>

コンサート当日まで1ヶ月を切りました!
イリーナさんブログ最終日。

昨年日本デビュー10周年を向えて、ますます充実した音楽活動を続けているイリーナさん!これまでの活動を振り返り、今後の抱負、「こんなことがしたい!」という夢を語っていただきましょう。

イ:ロシアにも「時間はまたたく間に飛んでいく」という諺がありますが、時が経つのはほんとうに早いですね。日本での10年間も早かったです。とても充実した10年間だったと思います。
子供のころからプロの演奏家になることを目指して頑張ってきましたが、振り返ってみると、すごくラッキーだったと思います。よい先生に師事することができたし、よい環境で活動させてもらえたり。素晴らしい先生たち、先輩、友人たちにも囲まれていました。今でもロシア時代の友人・知人たちの来日公演などがあると必ず演奏会を聞きに行きますよ。彼らの活躍ぶりをみて自分も頑張らなければ、と思います。

今後の目標、夢を伺えますか?

イ:目標、夢・・・。やりたいことはほんとうにたくさんあるのですが。これまで積み重ねてきたことを続けていくことをいちばんの目標としています。『継続は力なり』という諺があると聞きましたが、まさにその通りだと思います。将来こうしたいああしたいという目標ではなく、これまで自分がやってきたこと、今やっていることを続けるのが目標です。もちろん今よりも上手くなりたいですし、音楽家として人間として成長していくことが大切なのは言うまでもないですけど。
クラシック(古典)作品というのはほんとうに無限の世界を持っていると思います。同じ曲を何度も弾きますが、これだけ出来たから完成、ということはありません。弾くたびに新しい発見があります。それゆえに何度でも弾きたくなるし、何度でも聞きたくなるのでしょう。弾くたびに、聞くたびに作品を生きるということです。まさに一期一会ですね。仙台のコンサートでも聴衆の皆様との一期一会を大切にしたいと思っています。

※【写真】旧友、コンスタンチン・リフシッツ氏と

1週間お付き合いをありがとうございました。
また、コンサート会場でお会いしましょう!

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html