岡村喬夫(6)「バリアフリー」

2008.06.20| 岡村喬生

田中徹二さんは全盲。日本点字図書館・理事長で、このほどNHK放送文化賞を受賞した。俳優の渡哲也、藤村志穂などと一緒に、永年の盲人向け放送への貢献を表彰されたものである。その偉業を讃えて、一昨日、東京、ホテル・グランドヒル市谷で160名の人々が集まりパーテイが開かれた。僕は同点字図書館の理事の一人で、同図書館の為に資金を集めるチャリテイコンサートでアーテイストの選定などのお手伝いをしている。田中さんは早稲田の理工学部学生で図面を引いていたが、視力を失い文学部に入りなおした。僕は彼がまだかすかに視力を持っていた頃から知っている。

全員着席の宴は1万円の会費でフルコースのフランス料理が供されたのだが、それは、目の不自由な方々にはビュフェースタイルは駄目なのだそうだからで、このホテルが最もそういうパーテイに慣れているのだそうだ。新しい皿が目の前に供される毎に、サービスの人は丁寧に耳元で、料理の説明を一人ひとりにくどく繰り返す。晴眼者には必要ない説明である。例えばフィレステーキに付く温野菜類は一括して、柄がついていて取りやすい小分けの鉄製鍋に入り、同一皿の上に並ぶ。小皿でなく鉄鍋なのは柄が付けてあり取りやすく、万一落としても破損し怪我などしない為だろう。

僕は田中さんたち盲界の人たちと付き合い、色々と勉強をした。田中さんという人がそうなのだろうと思ったら、実は盲人は皆、謙遜だった。そして、このホテルのように世間には、そういう人々の為に便宜を計らうすべを知っている人がいるのだ。聾界の人々にもこのホテルは対応するすべを知っているのかもしれない。駅のホームにも盲人向けに黄色い点線が引かれている。ファミリーレストランにも点字のメニューがある。缶ビールにも点字で印があり何々ビールであること、そして開け口が解るようになっている。

本間一夫という人が日本点字図書館を盲人の為に私財を投げ打って開設した。僕たちがやっているチャリテイコンサートは本間一夫記念と銘打っていることで解るように、本間先生は盲界の先進的偉人である。そして本間先生が田中さんを後継者に指名した。本間先生、田中さんたちのお陰で世間にはバリアフリーの思想が広まったのである!

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