せんくらの楽しみ方

■ 長谷川陽子(チェロ)

(1)2006年06月18日

はじめまして、チェロの長谷川陽子です。今日から一週間【せんくらブログ】担当させていただきます。

こういった音楽のお祭りは、演奏する側も聴く側も一緒になって何しろ街中が音楽好きさんたちで溢れるわけで、今から私もとても楽しみ!!
 
【せんくら】では10月7&8日にベートーヴェンやモーツァルト、名曲中の名曲の白鳥や目下放映中のNHK連続テレビ小説【純情きらり】のテーマ曲などを演奏する予定です。

さて、一回目はチェロってどんな魅力があるの??という人のために、私が思うチェロの魅力について、ちょこっと簡単にお話しましょう。チェロはよく「人の声に一番似ている音色だ」と言われます。 嬉しいとき悲しいとき、幸せなとき疲れているとき、いつ、どんな時でもチェロの音は不思議と素直に心が落ち着くのです^^何でもその筋のお医者さん曰く【胎教にもいい】とか??  そして、音域が広い!高い音から低い音まで出せるということは、華やかなソリスティックなことも出来れば、縁の下の力持ちでメロディを支えてあげることも出来る。 生まれたての純真無垢な赤ちゃんのような音から、訥々とした人生甘いもすっぱいも知り尽くした老人の渋みも出せるのです。

そんな楽器はチェロだけです!!なーんて言ったら、来週のブログ書く次の演奏家から「いや!一番いい音がするのはボクの楽器だ!!」なんて怒られちゃいますね^^;(次の人、ゴメンナサイ)ま、皆それぞれに自分の弾いている楽器が一番いいと思いながら弾くのがよいのです^^
 
というわけで、せんくらのコンサートでも、バラエティに富んだチェロの魅力いっぱいのプログラミングになっています^^ お楽しみに!!

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(2)音楽と味覚2006年06月19日

昨日は今週のコンサートでご一緒する川畠さんとのリハーサル。実はソナタや小品、協奏曲の機会が多く、室内楽はほとんどピアノ・トリオという・・・。ココだけの話、クワルテットは久しぶり、緊張しました〜!!

という訳で、今日は演奏家のリハーサルとはどんなぞや?というご質問にお応えしましょう。

音楽は「絶対」なんてことはなくて、ある意味味覚に似ていると思うと、わかりやすいでしょうか。
珈琲はやっぱりエスプレッソという人もいれば、泡立てたミルクたっぷりのカプチーノがいいというのもアリ。しゃぶしゃぶはポン酢か胡麻たれか・・・味噌は仙台味噌に限る、いやいや赤味噌も白味噌も捨てがたい・・・と色々あっていいのです^^

音楽もそれにとても似ていて、ある人はピリリと辛口、でもある人は甘い音色だったり・・・そして隠し味の人もいるわけで。共演者同士の味覚の違いやぶつかり合いを聴くのも一興ですし、ある時はその持ち味が微妙にブレンドされて偶然に生まれる音のグラデーションの一瞬は、まさに生もののコンサートならでは。

人によっては、言葉要らずで耳で聴いて合わせてくれる人もいれば、まずお互いの違いをじっくり話し合って言葉で理解しながら音にしていく人もいれば・・・千差万別!! 私の密かなリサーチによると、たいてい理性的にリハーサルする人はA型が多い??(かな??)

ちなみに10月の【せんくら】での私のパートナー、仲道祐子さん。彼女は私が思うに絶対「耳タイプ!!」。いつもすっかりお世話になっています^^

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(3)あるチェリストの休日 — 2006年06月20日

ブルーベリーのは焼くと黒くなってしまうので、チェリーで焼いた『奇跡の大成功』の時の写真を添付します^^

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今日は一日家での練習デーでした。打ち合わせもリハーサルも何も予定のない、休日のような休日ではないような??

という訳で今日は「演奏家のオフ」について、お話します。
夏休みなどはあえて何日もチェロから離れる一週間を作って友達と会ったり、映画三昧、ドライブ三昧ですが、通常のお休みでは練習をしながらのちょっとした気分転換を楽しみます。それはDVD鑑賞だったり、食料庫を覗いて作る簡単な、気まぐれ料理だったり・・・。
料理はコトコト煮込むシチューなどを作るのが好きなのですが、夏場はさすがに暑いので最近はキッシュやパイ作りがマイブーム。
 
今日は超手抜きキッシュとタルト(もどき)を焼きました^^こちら、フィンランド留学中にルームメートから教わった【超簡単ベリータルトもどき】。フィンランドはベリー類が本当に豊富なのです。今日はブルーベリーで。目にいいんですよね^^
簡単なのに美味しいので、特別にレシピ初公開します!!手順・分量は全てお好みで。

キーワードは【適当に】^^;

1 タルト生地は市販のクッキーを砕いて生クリームと溶かしたバターで【適当に】混ぜてタルト皿に敷き詰めたら、180度のオーブンで15分ぐらい【適当に】焼いたら少し冷ます。
2 その間に中に詰めるブルーベリー(冷凍のブルーベリーでもOK)を【適当な】分量のお砂糖とコーンスターチで混ぜる。
3 焼いておいたタルトの上に2を乗せ、180度ぐらいのオーブンで焦げない程度に【適当に】30分ぐらい焼く。

これだけです!!これをクッキングと呼ぶにはお恥ずかしいものもあるのですが、食料庫に常備してあるもので、ちゃちゃっと作れるし、どれもそのまま食べても美味しい材料ですから、絶対失敗しません(笑)カロリーもクリームをなしにしたり、お砂糖の加減で少しだけ控え目。

特に甘い物が好きな女性の方、時間がなくても簡単に出来るので是非お試し下さいね^^
(そんなの、料理じゃない!というツッコミは禁止です!!)

P.S 旬のアメリカン・チェリーでも作りました!

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(4)『初恋』本日リリース^^ — 2006年06月21日

いよいよ今日リリースです^^私の15枚目の新アルバム、心温まる日本の歌を集めた【初恋】。

毎回アルバムをリリースする日は、どきどきとワクワクが混ざって何となくそわそわしてしまうのですが、やはり大切に作った新しいアルバムが世の中に生まれる日というのは、個人的にとても嬉しいもの^^ 

日本の自然というのは、とても繊細なのにかけがえのない、きらめきの一瞬を見せてくれます。例えば、寄せては返す波が形作る砂のオブジェだったり、しっとりと浮かぶ月と、それに戯れる雲や風の静寂の会話であったり、
固く結んだ花のつぼみがほろりとほころびる一瞬であったり・・・。こうしたささやかな四季が創る小さな宝物を、改めて慈しむ時間というのは、私たち日本人にとって、最上の心の贅沢ではないでしょうか。

このアルバムを手にしてくださる方々にとって、このアルバムが『心の音のブーケ』となりますように・・・という思いを込めて新アルバム【初恋】をレコーディングしました。

『浜辺の歌』や『荒城の月』、そしてアルバムのタイトルでもある石川啄木の『初恋』などを含むシンプルで耳懐かしい曲から、 『大きな古時計』やそして『純情きらり(ロング・ヴァージョン版)』のテーマ曲などなど。

特に個人的に好きなのは、今年没後10年である武満徹さんの『翼』をチェロ一本に、寺嶋陸也さんがアレンジしてくださったもの。ちょっとお洒落で自由自在、伸びやかに羽ばたく素敵な無伴奏の『翼』となりました^^

スピーカの前に腰をすえてじっくり耳を傾けるアルバムもあれば、この【初恋】はお好きな所でお好きな時間に、素朴なチェロの音とともに温かい時間を過ごして頂けたら・・・とても幸せです!

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(5)ゴリラくんとの出会い、そして旅 — 2006年06月22日

今日は私のチェロ【ゴリラくん】との出会いについて。
愛用の楽器はマッテオ・ゴフリラー1700年製作の306歳。私は製作者の名前をもじって【ゴリラくん】と名付けています^^

話はかなりさかのぼり、まだフィンランド留学中。ある日「アメリカでとてもいいチェロが売りに出されたから紹介してあげるよ」と大先輩チェリストからお知らせがきたのですが、丁度その時シベリウス・アカデミーは試験期間中。「どこでもドア」でもない限り、学生の身分としては試験をサボってアメリカまで見に行くのはムリです^^;

今回は諦めようと思っていたところ、恩師ノラスが「来週からアメリカ・ツアーに行くから、僕が代わりに見てきてあげるよ」。半分本気、半分ジョークで「是非!!」と答えたものの、その後起きるであろう大変な事を誰が予想出来たでしょう?!

その事はすっかり忘れて、のんびりヘルシンキで学生生活を送っていたある日、ノラス先生から「やぁヨーコ、今すぐヘルシンキの空港にいらっしゃい!!」という電話が。理由を聞く間もなく、電話の向こうは既にツーツーツー・・・。

「??」と思いながら空港に着くと、先生がニコニコしながらご自分のチェロ・ケースの他にもう一つ持って立っている・・・??「ヨーコ!!君が言っていたチェロ、とても素晴らしいから持って帰って来たよ、買いなさい!!」 

か、か、買いなさい・・・?!
勿論弦楽器というのはポンと買えるモノではありません!普通は慎重に数日試し弾きをして、よぉ〜く先立つものと相談してから、清水の舞台から飛び降りる覚悟で手にするものです。。。 いきなり持って帰られちゃっても・・・いや、さすが先生、やる事大胆!!

嬉しさと困惑な気持ちと、そして先生の大胆さに妙な感動をしながら、取り敢えず自宅に戻り、まるで玉手箱を手にした浦島太郎の気分でケースを開けてみると・・・!!すっかり一目惚れ^^

これが私の人生のパートナー【ゴリラくん】との運命の出会いです^^
手にした当時はまだ色々部品交換など修理もありましたが、今では世界のどこに行くのも一緒に旅をし、色々なコンサートの思い出もいっぱいです。 ゴリラのお陰で色々な地に行く事が出来て、沢山の人に出会えるのです。

10月の【せんくら】では、私と共にこの【ゴリラくん】もどうぞお見知りおきを!!^^

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(6)本番グッズ — 2006年06月23日

5月の【せんくらブログ】にもギターの福田さんが登場していらっしゃいますが、ギタリストほど直接的に音に影響する訳ではないとはいえ、器楽奏者はツメの手入れが欠かせません。あるピアニストは「昨日伸びた分のツメを毎朝必ず切る」というし、私自身ツメやすり3往復程度で削れる微調整でも、弦を押さえた時の感触が変わってくるのです。

そんなこんなで、今日は【私の本番の隠れた七つ道具】についてお話しましょう^^

♪一番左下のピンクのシールとその隣の青い小さな物体は弓の滑り止めに。ゴムを巻いている方もいますが、両方とも大きな文具店で事務用品として売っているものです。このピンクのシールはなぜか最近見かけなくなりました。先日メーカーに直接電話してダンボールでお取り寄せ。

♪そしてブルーのお隣の赤い細長いモノは、先ほどの話のツメやすり。時には左指先の硬くなった角質もこれで削ります。

♪下の一番右はご存知のかたも多いかと思います、チューナー。特に無伴奏を弾く時は、個人的な好みでかなり通常より調弦を下げるので、そんな時使います。

♪そして、その上。こちらはサージカルテープ。これは、チェリストがステージ上のどこで弾くと一番ホールがよく響くか・・・とゲネプロでの試し弾きの時の目印や、突然楽譜の製本をしなくてはならない時、そして指先が割れてしまった時のテーピングとしても大活躍してくれる強い味方です!!

♪お隣はご存知、使い捨てカイロ。これを発明してくれた方、本当に素晴らしい!!一年中チェロ・ケースの中にはこれが数個常備してあります^^

♪そして最後の左上の黒い物体。こちらは弱音器です。たまにですがリハーサルをしてみて、「間に合わない!!」と旅先のホテルで夜慌ててコソ練する時があります^^;そんな時はお隣の宿泊客の安眠のために必ずこれを楽器に付けて・・・何度私のコソ練の危機を救ってくれたことでしょう?!

【せんくら】期間中は、弾くだけでなく、私自身も聴きに行きたいコンサートが目白押し。それに普段忙しくて会えない演奏家仲間とも、コンサートの後美味しいお酒もチョットぐらいは飲みにも行きたい・・・!!仙台では、この弱音器のお世話にならなくてもいいように、今から頑張っておこう・・・!!とこのブログを書きながら決意を新たにした長谷川でした^^;

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(7)【せんくら】でお会いしましょう!! — 2006年06月24日

一週間お当番させていただいた【せんくらブログ】本日が最終日です。一週間お付き合いくださりありがとうございました!!

生もののコンサートは毎回一期一会です。演奏中、演奏家の頭の中にあるものも毎回違います。「次のフレーズのあそこを、こうしよう」と考えている場合もあります。
またとってもお腹がすいている時は、思わず「うーん、ここは海の近くだから、弾き終わったら今日は美味しいお魚!!」などと・・・^^;イケマセンよね、ベートーヴェンを弾いている時に仙台湾で獲れるお魚のことなど考えていては・・・人間は空腹だと何か良からぬ事を考え始める生き物なのですm(_ _)m

そんな現実的なことを考えている時もありますが、たいていはその時その時の音のイメージに合った情景を思い浮かべていたり、曲に合わせて一人頭の中で物語を作ったり・・・。逆に、何も考える余裕なく無我夢中で、弾いている最中の記憶がほとんどなく、お客様の拍手でふと我に帰る時も。本当はこれが一番の理想かもしれません。(これは私だけかもしれませんが^^;)
 
それから会場のお客様の熱気に煽られて、思わず演奏家も予想以上に火が付くこともあるのです。これはこれで弾いていて、とっても楽しい^^

今回のピアニスト仲道祐子さんとはここ数年何度も共演をしていて、私が信頼しているピアニストの一人。とてもチャーミングなお人柄です^^二人とも今から「せんくら、楽しみだね〜」と話しています。

コンサートは毎回一期一会。色々な要素が偶然的に発生して、一瞬一瞬の音空間を埋めていきます。私のコンディションは勿論、共演者、ホールの響き、お天気も影響します。それから客席にいらっしゃるお一人お一人皆で創りあげるもの。その一瞬の音は、その場に居合わせている人たちだけの物、二度と同じ音楽は生まれないのです。皆様と一緒に幸せな時間を作れるような・・そんなコンサートに出来たら、とても幸せです。

最後に宣伝!!【せんくらブログ】より不定期更新で日記風雑文ですが、私のオフィシャル・ブログも、よかったら是非遊びにいらして下さいね^^
http://www.yoko-hasegawa.com/index.html
10月7&8日皆様とお会いできるのを、今からとても楽しみにしています!!是非【せんくら】でお会いしましょう!!

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(C)仙台クラシックフェスティバル2006実行委員会