せんくら・うた劇場 ブログ③

2015.09.21| せんくら・うた劇場

こんにちは。作曲家の吉川和夫です。

 

今年の【せんくら・うた劇場】「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」(宮澤賢治原作・吉川和夫作曲)では、とてもすてきなコラボレーションが実現することになりました。

アトリエ・コパン美術教育研究所(石巻)主宰の新妻健悦、悦子ご夫妻のご協力を得て、小学生たちのアートを、演奏と併せて、スライドで投影するのです。

 

新妻さんご夫妻は、絵画や造型の制作を通して、表現することの楽しさを教えていらっしゃいます。

しかし、単なる絵画教室ではありません。

自由な発想と可能性を引きだすために、子どもたちには毎回違う「ミッション」が与えられます。

定規を使って直線だけで描く、絵の具を垂らす、厚く塗った色を引っ掻く、いがいが、でれでれ、トロトロといったオノマトペを形にする、新聞紙に描く、コラージュ、でたらめな漢字を作る等々…。

大人だったら硬くなった頭をかかえてしまうような「ミッション」を、子どもたちは、制約があるからかえって柔軟に発想できるのです。

生まれるほとんどすべての作品は抽象で、ここには「上手」「へた」の尺度はありません。
だからこそ、思いきり楽しく表現できるのですね。

石巻コパン

石巻のアトリエ・コパンにて

 

アトリエ・コパンの活動は、今年41年目を迎えたそうです。

その作品は、仙台や東京をはじめいろいろなところで紹介され、昨年は横浜美術館などで開催された「ヨコハマトリエンナーレ」(日本を代表する現代美術展です)にも招かれたそうです。

 

新妻さんは、東日本大震災の津波でアトリエ、ご自宅とも大きな被害を受け、多くの作品が失われてしまいましたが、幸い写真ファイルは残りました。

【せんくら・うた劇場】とのコラボレーションについてご相談したところ、喜んで協力してくださり、「虔十公園林」にふさわしい作品を30点ほど選んでくださいました。

それらを拝見して、元は意味が付与されていない作品なのに、まるでこの公演のために描いてもらったようなものばかりであることに、驚き、感激しました。

アトリエ・コパンの子どもたちのアートは、「虔十公園林」の世界をより一層深めてくれるでしょう。

コパン

打ち合わせをする新妻ご夫妻と吉川

 

公演は10月4日(日)14時15分~15時、エルパーク仙台ギャラリーホール(公演番号69)です。

どうぞお楽しみに!

 

せんくら・うた劇場
吉川和夫

せんくら・うた劇場 ブログ②

2015.09.20| せんくら・うた劇場

こんにちは。作曲家の吉川和夫です。

昨年大好評を頂いた【せんくら・うた劇場】を、今年も開催させて頂けることになりました。

公演は10月4日(日)14時15分~15時、エルパーク仙台ギャラリーホール(公演番号69)です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

【せんくら・うた劇場】って?

小さなお子さんに「読み聞かせ」ということをしますよね。
【せんくら・うた劇場】は、歌いながらお話をたどっていく、いわば「歌い聴かせ」ということになるでしょうか。
子どもさんでも大人の方でも楽しんで頂ける公演になるよう、目下練習を重ねているところです。

 

今年のプログラムは宮澤賢治原作・吉川和夫作曲「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」です。

「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」のようには知られてはいませんけれども、とてもすてきなお話です。

虔十楽譜

虔(けん)十(じゅう)は、ある日お母さんに700本の杉の苗を買ってほしいと頼みます。そんなたくさんの杉をどうするのだ?といぶかるお母さんとお兄さん。「買ってやれ。虔十は今まで何ひとつ頼みごとをしなかったのだから」とお父さんが言ってくれました。そして、家の後ろの大きな運動場くらいの広さの野原に杉苗を植えていきます。杉はすくすくと育っていったのですが、ある日野原の北側に畑をもっている平二が怖い顔をしてやってきました。虔十が植えた杉林は、どうなってしまうのでしょうか…。

 

虔十さんは、年齢不詳です。
「いつでもはあはあ笑っている人でした」という証言があります。
みんなから「少し足りない」と思われてもいたようです。

この話、私には、どこか「仙台四郎」という人の話と重なるように思えてしまうのです。

仙台では、飲食店の神棚などに、仙台四郎の写真や置物が飾られているのを見かけることがありますよね。
仙台四郎さんは幕末から明治にかけて実在した人物です。
知的障害によって言葉をちゃんと話すことができず、子どもが好きでいつもニコニコ笑っていた、立ち寄る店は必ず繁盛したので、どこの店でも温かくもてなしたそうです。
だから、四郎さんは今でも商売繁盛の「福の神」として祀られています。

ほほえましい都市伝説ですが、特別な支援が必要な人を地域の人々がみんなで守っていた証でもあるように思います。もちろん、地域の人々がみな寛容だったわけではなく、「虔十」を疎ましく思う「平二」のような人もいたでしょう。

 

虔十や平二にモデルがあったのかどうかわかりませんが、賢治が、今でいうノーマライゼーション、健常者と障害者とが区別されることなく生活できる社会の実現を見据えていたのは間違いありません。

限りなくお伽話風でありながら、同時に限りなく現実に隣接しているところがこの作品の凄さだと思います。

 

この作品は、1999年にオペラシアターこんにゃく座が初演したオペラ「虔十公園林」を、山形の合唱団じゃがいもが合唱劇として上演しました。

初演プログラム表紙

谷川集平氏の絵による初演時のパンフレット

昨年に続き、今年も中村優子さん、髙山圭子さん、原田博之さん、髙橋正典さん、そして倉戸テルさんというとても素晴らしい演奏家の皆さんが、演奏を引き受けてくださいました。
重唱としては初めての演奏になります。

仙台四郎の伝説のように、虔十のお話もどうか長く伝えられますように。

 

そして、今回は、もうひとつすてきなコラボレーションが実現することになりました!

詳しくは次回に!

 

せんくら・うた劇場
吉川和夫

せんくら・うた劇場 ブログ①

2015.09.19| せんくら・うた劇場

昨秋の「せんくら・うた劇場 ~45分でめぐる銀河鉄道の夜~」が懐かしく思い出されます今日この頃、いよいよ!待ちに待った!!「虔十公園林」の楽譜が届きました!!!

宮澤賢治氏の短編童話で、彼の亡くなった翌年の1934年に発表されたそうですが、私はこれまでまだ一度も読んだことがありません。

童話の始まりはいつもワクワクしますね。

「虔十はいつも縄の帯をしめてわらって杜の中や畑の間をゆっくり歩いているのでした。雨の中の青い薮を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑ふものですから虔十はだんだん笑はないふりをするようになりました。風がどうと吹いて‥・」

こうして楽譜を読み進んで行くと、宮澤賢治氏の言葉がとても生き生きとして、まるで吉川和夫先生の音楽のようです!いや、音楽が言葉のようなのです!

ふと、そんなことを考えては‥・よく譜読みが止まってしまうのですが。

さて、いつも笑顔の虔十はどうなるのでしょうか?童話の続きがとても気になって、譜読みの再開で~す!

10月4日のせんくら・うた劇場にぜひいらしてください!

(2015.08)

 

せんくら・うた劇場
中村優子

宮澤賢治作品との出会い

2014.08.21| せんくら・うた劇場

暑かったり涼しかったりする日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

この度、宮沢賢治原作、吉川先生作曲の「銀河鉄道の夜」に出演させて頂く事、心より楽しみにしております。
海外が長かった僕と宮沢賢治さんの作品との出会いはとても運命的なものだったと思います。

仙台に引っ越してきて、佐藤泰平先生と出会い、賢治さんが作詞をした曲を歌わせて頂いたり、今年の頭には塩竈市にて新倉健先生作曲、中村敬一先生台本のオペラ「ポラーノの広場」でキューストを歌わせて頂いたりしました。
そして来年はニューヨークにて佐藤誠一先生作曲の「セロ弾きのゴーシュ」を一人オペラとして初演させて頂く予定です。

日本人の心を描いた宮沢賢治さんですが、実はその作品を守った弟の清六さんの存在も忘れてはなりません。なぜなら、清六さんは1945年の8月10日に襲った空襲で、賢治さんの作品を守り抜いたからです。
清六さんのおかげさまで、我々は賢治さんの作品を楽しめるという訳です。
「銀河鉄道の夜」はその賢治さんの代表作の一つです。

今回、アンサンブルとして、出演する事を、心から楽しみにしています。
是非、お越し下さい。
せんくら・うた劇場
高橋正典

合唱のこと

2014.08.20| せんくら・うた劇場

せんくらブログをご覧のみなさま、はじめまして。声楽の原田博之と申します。吉川和夫さん作曲の《銀河鉄道の夜》でご一緒できますことを嬉しく思います。私も子どもの頃から合唱を歌ってきましたが、本作品は子どもから大人まで一緒に楽しみ、宮澤賢治先生の世界を味わうことのできる作品です。初演を務めた「合唱団じゃがいも」は、子どもと大人が一緒に素晴らしい舞台をつくりあげました。現在私たちもその練習に取り組んでいます。

子どもの合唱とは縁がありまして、昨年からNHK仙台少年少女合唱隊の指導に携わっております。そして支倉常長が主人公の三善晃先生作曲のオペラ《遠い帆》東京公演(http://www.toiho.info)が、8月23日、24日に迫ってきました。このブログが掲載される頃、私たちは東京・新国立劇場でリハーサルの毎日を送っている予定です。

合唱隊は昨年の仙台公演から上級生が大勢抜けてしまうなど、ここまで困難の連続でした。ですが残されたベリー、ベリー・ヤングな子どもたちと力を合わせて頑張っています。演出の岩田達宗さんや指揮の佐藤正浩さんをはじめ、素晴らしいスタッフの皆さんとご一緒させて頂ける幸せをかみしめつつ、ソリストの皆さんの歌声に感激し、大人の合唱の迫力に圧倒される充実した毎日を送っています。

お昼は、おいしくて楽しい流しそうめん

夜は、満天の星空の下で花火大会!

練習風景がありませんでしたが…、もちろんたくさん練習しました!

私が三善先生の合唱作品と出会ったのは、小学生の時に歌った《オデコのこいつ》から〈ゆめ〉でした。先生の作品に込められたメッセージは、子ども心に強い印象となって残りました。私の声楽の師は2000年の公演で支倉常長役でしたし、今回の常長役の小森輝彦さんも大学でお世話になった先輩です。色々なご縁があっての今回のオペラ公演、陰に徹して精一杯務めたいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございます。10月に《銀河鉄道の夜》でお会いしましょう! 今年はフィナーレの第9の合唱指導にも関わっています。こちらも合わせまして、どうぞよろしくお願い致します。
それではみなさま、どうぞ良い夏をお過ごしください。

せんくら・うた劇場
原田博之

3回目のせんくら

2014.08.20| せんくら・うた劇場

せんくら・うた劇場”銀河鉄道の夜”に出演させていただきます、高山圭子です。
今回でありがたいことです、せんくら3回目となります。
2006年、せんくら記念すべき第一回目、ソロのステージと第九で歌わせていただきました。とても嬉しい機会を頂いて嬉しいのと、その大きなフェスティバルに出させていただくプレッシャーで緊張が止まりませんでした。

そして2011年、誰もが忘れられない年に第九を歌わせていただきました。

その時その時で、たくさんの思い出を残してくれる、このフェスティバル、2014年は、アンサンブルでの出演。吉川先生の、銀河鉄道の夜、今回は、せんくら特別バージョン45分でお送りいたします。大変内容の濃い、感動的な作品です!きっと皆さんと素敵な旅が出来るでしょう!では、私は、その旅の準備をしないといけないので、当日お会いしましょう!お待ちしています!
せんくら・うた劇場
高山圭子

45分でめぐる『銀河鉄道の夜』のこと

2014.08.19| せんくら・うた劇場

こんにちは。作曲家の吉川和夫です。

このたび、45分でめぐる『銀河鉄道の夜』を、せんくら・うた劇場として演奏することになりました。公演は10月5日(日)11:45~12:00、エルパーク仙台ギャラリーホール(公演番号65)です。どうぞよろしくお願いいたします。

ご存知のとおり、「銀河鉄道の夜」は宮澤賢治の代表的な作品です。ジョバンニ、カムパネルラという二人の少年が、「ほんとうの幸い」を求めて銀河を旅する、美しくも哀切な物語…。ところが、題名はよく知っているけれど、実はちゃんと読んだことがないという声もよく耳にします。特別難しい言葉が多いわけではありませんが、イメージがあまりにも壮大かつ自由に広がっていくため、ついていくのに苦労する面が、もしかしたらあるのかも知れません。

その「銀河鉄道の夜」を合唱劇にしようと考えたのは、合唱団じゃがいもの指揮者・鈴木義孝さんでした。山形を拠点とする合唱団じゃがいもは、他に類のないユニークな活動で知られています。ここには子どもからおとなまで在籍していますが、おとなの合唱団に児童合唱パートが付いているのではなく、高校生以下は必ず親と一緒に参加します。三世代で参加している家族もあります。そして、おとなも子どもも、同じレパートリーを歌うのですが、そんなふうに世代を超えて一緒に歌える合唱曲は決して多くありません。そこで、「新しい曲を書いてよ」という鈴木さんの要請に応えて、作曲家の林光さんや萩京子さんや私が作曲してきました。その多くが宮澤賢治を題材とした合唱劇となり、すでに20作品を越えています。合唱劇という形をとれば、子どもは子どもなりの、おとなはおとなの役割をもって活動することが出来ます。お芝居が目的ではありませんが、簡単な小道具や衣装は、みんなで手作り。加藤直さんや恵川智美さんといったプロの演出家に全体をまとめてもらいます。じゃがいも版の合唱劇「銀河鉄道の夜」を演出してくださったのは、故・山元清多さんでした。学生の合唱団のように、声が均質な合唱の美しさとは違って、多世代の声が混じる歌声もなかなか良いものです。

合唱団じゃがいもが、満を持して「銀河鉄道の夜」を合唱劇として制作し、山形と仙台で上演したのは2007年のことでした。名だたる名作への挑戦なだけに、私も合唱団も覚悟を持って取り組みました。しかし、原作は文庫本で60ページ余り、朗読するだけでCD2枚分の時間がかかります。私たちが脚色のポイントとしたのは、「原作の言葉を(時間の関係で)省略はしても変更はしない」ことでした。原作の言葉は、歌うために大幅に整理せざるを得ませんが、言葉の変更・置き換えは一切行っていません。それでも、上演には約2時間を要します。上演に立ち会った方々から「内容がよくわかった」「原作を改めて読みなおすきっかけになった」などの声を頂けたのは嬉しいことでした。

このたびの「せんくら」では、「銀河鉄道の夜」という作品の魅力の一端をお伝えできるよう、さらにコンパクトな45分バージョンを作りました。ここにおさまりきらなかった部分に、面白いところ、大切な言葉がたくさんあります。この公演が、原作を読み直すきっかけになったら嬉しいです。

「せんくら・うた劇場」と銘打ったのは、この合唱劇「銀河鉄道の夜」が、歌であると同時に劇的なストーリーを持っているためです。そういった作品は古今東西いろいろありますから、これから「せんくら」の中でシリーズとして上演していったら面白いのではないかなという個人的な思いを、私は持っています。

思いがけず、中村さん、髙山さん、原田さん、髙橋さん、そして倉戸さんというとても素晴らしい演奏家の皆さんが、銀河のお祭りに集まってくださることになりました。重唱版としては初演になります。45分でめぐる『銀河鉄道の夜』、ご一緒に楽しんで頂けたら幸いです。

宮澤賢治さんの墓所(2007年12月 撮影・吉川)

合唱団じゃがいもによる合唱劇「銀河鉄道の夜」

合唱団じゃがいものホームページ
http://www.the-jagaimo.com/
せんくら・うた劇場
作曲・監修 吉川和夫

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