みなさん、こんにちは。前橋汀子です。
今日より1週間、私が「せんくら2007」で演奏するプログラムについて、簡単な解説とちょっとしたエピソードを交えてお送りします。
まずは、エルガーの「愛のあいさつ」について。イギリスの作曲家、エルガーといえば、みなさん一度は耳にしたことがある行進曲「威風堂々」が有名ですが、それと同じようにこの「愛のあいさつ」はご存知だと思います。ヴァイオリンとピアノという編成だけではなく、チェロやフルートなどでも演奏される短い小品です。もともとピアノだけのために書かれた曲ということは広く知られています。題名の通り、愛に満ちたきれいなメロディーは、今なお世界中で愛される名曲です。
次に、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調op.108」は、ブラームスが夏の休暇を過ごしたスイスのトゥーン湖畔で作曲されました。数年前、私はこの曲が生まれた背景、風景などを自分の目で確かめたく、トゥーン湖を訪れたことを思い出します。このヴァイオリン・ソナタ3番は、ブラームスが作曲した3曲のソナタの中でも最も感傷的でロマンティックな哀愁と情熱に満ちた作品だと思います。この曲は、当時指揮者でピアニストでもあった大音楽家ハンス・フォン・ビューローに献呈されました。
明日は、チャイコフスキーの「メロディ」について、触れたいと思います。
前橋汀子
こんにちは。前橋汀子です。
今日は、チャイコフスキーの「メロディ」について、触れたいと思います。
この曲はチャイコフスキーが1878年にヴァイオリンとピアノのために作曲した「懐かしい土地の思い出」という組曲の中の1曲です(「瞑想」、「スケルツォ」、そして「メロディ」の全3曲)。ピアノの穏やかな伴奏に、ヴァイオリンが3拍子の美しいメロディーを奏で、お互いに響き合いながら静かに終わりに向かう幻想的な曲調です。
この組曲のタイトルにある「懐かしい土地」というのは、1877年にチャイコフスキーが結婚の破綻から逃れ療養していたスイスのレマン湖ほとりにある風光明媚な小さな町「クララン」といわれています。この地ではチャイコフスキーの代表作であるヴァイオリン協奏曲も作曲されています。
実はクラランには、私の師で20世紀を代表するヴァイオリニストのジョセフ・シゲティ先生が住んでおられたので、私もかつてはクラランに住んでいたことがあります。
当時、チャイコフスキーが滞在していた場所は、今ではモダンなホテルが建っています。そのホテルの玄関には「1878年チャイコフスキーがヴァイオリン協奏曲をここで作曲した」と書かれたプレートが飾られているのです。
それでは、また明日。
前橋汀子
こんにちは。
今日はまずシマノフスキの「アレトゥーサの泉」について。
シマノフスキはポーランド出身の作曲家で、この曲はヴァイオリンとピアノのための3つの詩曲「神話」の第1曲。
?ギリシャ神話の水の精「ニンフ」が恋された川の神「アルフェウス」から逃れシチリア島にたどり着き、泉の姿に変えてしまう。あきらめきれない川の神はシチリア島に追いかけてきて、その泉に情熱を注ぎ込む?という物語。
次にドヴォルザークの「わが母の教えた給いし歌」、「スラヴ舞曲 op.72-2」について。
「わが母?」は歌曲集「ジプシーの歌」op.55の第4曲で、ボヘミアの詩人アドルフ・ヘイドゥークの詩を歌曲にしたもの。“老いた母が私に歌を教えた時、目に涙を浮かべていた。いま、私がその歌を子供に教える時、日焼けした頬に同じように涙が流れる”と歌われる。
「スラヴ舞曲?」は、2つのスラヴ舞曲集「作品46」と「作品72」の全16曲の中の1曲。ドヴォルザークはブラームスを大変尊敬していて、当時ブラームスが作曲したピアノ連弾曲「ハンガリー舞曲集」がヨーロッパで大評判になり、これに触発され、自身もボヘミアの代表的なメロディーに踊りの曲を入れてこの「スラヴ舞曲集」は生まれました。
今日はここまで。それではまた明日。
前橋汀子
こんにちは。今日は、ブラームスの「ハンガリー舞曲」とクライスラーの「愛の喜び」「ウィーン奇想曲」について。
ブラームス作曲:ハンガリー舞曲第5番は、ハンガリー・ジプシー舞曲の4分の2拍子のチャルダーシュを取り入れ、素朴で格調高く作り上げられた、もとはピアノ連弾用の作品。全21曲あり、今回「せんくら」で演奏するのはその中でも最も有名な第5番です。情熱的で流麗な旋律、中間部の静と動が激しく交差するリズムが刻まれ、ジプシー音楽の特徴が際立っている作品です。
次に、クライスラーの「愛の喜び」「ウィーン奇想曲」について。クライスラーはウィーン生まれの大ヴァイオリニストであり、ヴァイオリンのためのオリジナル作品を多く作曲しているヴァイオリニストにとっては重要な作曲家の一人です。主に、古いウィーンの民謡を題材にすることが特徴です。特に「ウィーン奇想曲」は、クライスラーが故郷ウィーンに寄せる思いがたっぷりと歌い込まれています。
それでは、また明日。
前橋汀子
こんにちは。
今日はフランクの「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」について。
セザール・フランクは1822年12月10日ベルギーに生まれ、1890年11月8日パリで没した近代フランスの大作曲家。彼は同時に優れたオルガニストでもあり、フランスのバッハと称えられています。
フランクの作品ではニ短調の交響曲とこのイ長調のヴァイオリン・ソナタが最も有名。
ヴァイオリン・ソナタは彼の代表作のひとつで、1886年、死の4年前、64歳のときに作曲され、当時の大ヴァイオリニストで親友だったイザイの結婚に際しお祝いとして捧げられました。
4つの楽章からなり、各楽章とも第1楽章の冒頭に現れる短い動機によって統一されています。
「せんくら」では全4楽章の中より、第1・2楽章を演奏いたします。
・第1楽章 アレグレット・ベン・モデラート イ長調 8分の9拍子
ソナタ形式の展開部のないもの。第2楽章への導入部のような役割を占めている。
・第2楽章 アレグロ ニ短調 4分の4拍子
第1楽章の主題のモティーフを旋回した動機が全体を貫いており、激しい性質を持った力強い楽章。
前橋汀子
こんにちは。
まずは、マスネの「タイスの瞑想曲」から。
マスネはフランスの作曲家で名作オペラを書き残しました。その中のひとつが、この「タイス」です。アナトール・フランの傑作として知られる小説をもとに作られました。「瞑想曲(Meditation)」は劇中第2幕第1場と第2場の間奏に使われる曲で、神か悦楽か二者択一の道に迷う遊女タイスの胸の中を音で表現したといわれています。その美しさゆえに単独に取り出され、ヴァイオリンだけでなくチェロやフルートなどでも演奏される機会の多い名曲です。
次に、シューベルトの「アヴェ・マリア」。
原曲はスコットの「湖上の美人」から詩を取った、乙女エレンが父の罪が許されるように湖畔の聖母像に祈る歌。ドイツのヴァイオリニスト、ウイルヘルミがヴァイオリン独奏曲に編曲して大変有名になった小品。
今日はこのあたりまで。また明日。
前橋汀子
こんにちは。
今日でこのブログも最終回となりました。
最終回の今日は、ファリャの「スペイン舞曲第1番」とサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」について。
・ファリャ:「スペイン舞曲第1番」
近代スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャの出世作となったのが1905年に作曲された歌劇「はかなき人生」です。作曲当時のスペイン・グラナダを舞台に、「ジプシー娘・サルが裕福な青年・パコに恋をし、捨てられ、そのパコの結婚式に乗り込み、彼の足元で息を引き取る・・・」というストーリー。
この「スペイン舞曲第1番」は、パコとカルメーラの結婚祝宴でフラメンコの歌い手が歌い始め、情熱的な踊りが踊られるときに演奏される曲です。
ヴァイオリンとピアノ版は、先日も登場したクライスラーが編曲したもの。ほかにもギター2台で演奏されたりします。
曲自体は短いですが、その中にもファリャらしいスペインの雰囲気が存
分に発揮されています。
・サラサーテ:「ツィゴイネルワイゼン」
スペインの音楽的ながら質素な家庭に生まれたサラサーテは、幼少の時から楽才を発揮し、8歳でヴァイオリニストとしてデビューした天才ヴァイオリニスト。10歳でマドリードの宮廷で演奏し、女王から名器ストラディヴァリを与えられました。その女王の援助のもと、12歳でパリの音楽院に入学。それからは、ロシア、ヨーロッパ各地、南北アメリカで本格的な演奏活動を開始しました。天才ヴァイオリニストとしての演奏活動だけでなく、作曲家としてもヴァイオリンの名曲を数多く作曲しています。
この「ツィゴイネルワイゼン」の「ツィゴイネル」とはドイツ語で“ジプシー”、「ワイゼン」とは“歌”を意味しています。
ジプシー風の曲にハンガリーのチャルダーシュという民族舞曲の要素が加わり、華やかで情熱高い曲となっています。
今回はヴァイオリンとピアノで演奏いたしますが、もともとはヴァイオリンとオーケストラという編成で作曲されました。東京都交響楽団(小泉和裕さん指揮)との協演のCDも出てますので、「せんくら」ではヴァイオリン&ピアノ版を楽しんでいただき、オーケストラ版はCDでお楽しみください!
あっという間の1週間のブログでしたが、みなさんいかがでしたか?
昨年に引き続き2回目の「せんくら」で、ブログも2回目で、、。慣れないことをするというのは少々大変でした。
普段あまりこういうことをすることがないので、ご覧いただいた方、当日コンサートにお越しくださるお客様に少しでも楽しんでいただければと思い、毎日簡単でしたが曲目解説とちょっとしたエピソードを書かせていただきました。
“生”のヴァイオリンの音を“生”で聴いてもらいたい、という私の長年の思いが少しでも伝わればと思います。
プログラム全体はみなさんどこかで聴いたことがある曲ばかりを集めましたが、“生”で聴くと普段聴いているのとは違う感じ方をするはずです。
「せんくら」は低料金で通常のクラシックコンサートより短い時間で聴きやすいものが多いですが、これをきっかけに、“生の音”に興味を持っていただければうれしいです。
当日、コンサート会場でお会いできるのを楽しみにしています!!
前橋汀子